「う・・・」
「大丈夫。今すぐお城につれてってあげるからね」
城に連れてく・・・?
「俺は連れてくなんて言ってないぞ」
「私が連れて行くんです。海斗様、連れてってくれそうにないから」
「ほう。ならお前後から城に来いよ」
少し意地悪してみた。
美紅はまさかの切り返しに戸惑いながらも
「わっ、分かりました!」
女を持ち上げようとする。
「おっ、重ッ!」
それもそのはず。
そんなか細い腕で一人の女を持ち上げられるはずがない。
「じゃあ、早く来いよ」
後ろを向いて、捨て台詞のように吐いた。
「あー!待って下さいよぅ!!」
振り向くと、美紅はまだ一生懸命女を持ち上げようとしていた。
「仕方ない。10秒待ってやる」
「ふんがッ!!」
女の体は僅かに浮くものの、持ち上がるまでにはいかない。
「海斗様ぁ・・・・」
美紅は涙目になりながら、俺を見つめてきた。
とうとう力尽きたんだろう。
「あー、もう。貸せ」
美紅をどけて、女を持ち上げた。
「軽ッ・・・」
何食ってんだ・・・?
「わぁ!お城まで、連れて行ってくださるんですね!!よかったぁ!!」
美紅は満面の笑みで俺を見た。
・・・・そんな顔されたら、連れて行くしかないだろう。
「あ!でも、芽衣子様が許してくださるか・・・・」
「ん?」
芽衣子。
芽衣子は、俺の従姉弟であり、俺の婚約者でもある奴。
「芽衣子様、ひどくヤキモチ妬きな方でいらっしゃるから・・・」
「あー・・・」
そう。
芽衣子は、まぁどんだけ俺のこと愛してるのか好きでいるのか分からないけど、ひどくヤキモチを妬く奴だ。
一応一緒に住んでるけど、美紅にもヤキモチを妬いている。
今日の散歩だって、芽衣子に見つからないようにそうっと抜け出して来た。
「でもまぁ、心配ないですね!芽衣子様、海斗様の言うことだけはお聞きになりますから!」
美紅の顔は晴れて、にこにこ笑いながら言った。
「そうだ、美紅」
「はい?」
さっき美紅の言ったことを思い出した。
「この女を心中姫、と言ったな?」
「はい」
「どういう意味だ?」
美紅はいきなり顔を曇らせて、説明を始めた。
「数十年前の話です」
歩きながら、美紅は聞こえるか聞こえないかの声で話した。
「昔、村で二人の赤子が産まれたのでございます。赤子は同じ時、同じ時間に産まれ、よく似た顔をしていたのです。まぁ要するに双子ということですわ」
「ほう」
「その赤子は有名な大名の子だったものですから、村中祝福してね。しかし、赤子の父は大変横暴な方でして。その赤子も、横暴な大名が女に無理矢理孕ませて産まれた赤子だったのでございます」
「無理矢理・・・・」
「それに、赤子の母には恋人がおりました。しかし、別の男の赤子を産んでしまったものですから、悲しみに暮れていたのです。赤子の母は大名の妻。しかし、赤子の母の男は貧しい農民。身分違いの恋でありました。ある日赤子の母の恋人は、ひどい差別を受け、食べるものも与えられなく、病気にかかってしまったのです。そして男は、赤子の母の所を夜中に訪ね、こう申したのです」
美紅は俯き、こう続けた。
「共に命を絶とうと」
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