気が付いたら君は僕の7歩前を歩いていた。
そして僕に背を向けたまま、こう言った。


[さようなら]


涙が溢れた
胸がちくり、と痛かった

僕は機械で【ココロ】なんてないのに
なんでこんなに涙が止まらないの?
なんでこんなに胸が痛いの?

離れていく君の背中を眺める事も出来ず
声を上げて泣いた。

色のついていた世界が白黒の世界に代わる瞬間

僕はただただ泣いていた。

足元がふわっ、と軽くなった。
指先が透明に変化してきた。

どんな状態になったのか直ぐにわかった。
それは僕が一番恐れていた事。
一番怖かった事。



ねえ、マスター
僕は貴方の曲をたくさん歌えて嬉しかったです
貴方の元に来れて嬉しかったです
だから、どうか
[僕]という存在を忘れないで下さい
貴方の心のほんの1%でもいいから
[僕]という存在を残していてくれたら嬉しいです
本当に有難う御座いました



身体が透明になっていく。
本当はもっと歌いたかった。
マスターの書く優しい曲をもっと歌いたかった。
でも僕はシアワセでした。

涙が止まらない。
でももう時間だ。
今までありがとう。
そして


さようなら







【VOCALOID 00 KAITO アンインストールが完了しました。】





ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

アンインストール

キサラギカナデさん(http://piapro.jp/chimorin)の[涙]というタイトルの
KAITOイラストから生まれたお話。

きっとVOCALOID達にとって涙を流すほど悲しい事ってマスターと離れる事(アンインストール)なんじゃないかな?と思い、書きました。


読んで下さり本当に有難う御座いました!
感想お気軽にどうぞ♪

閲覧数:317

投稿日:2010/09/14 09:52:28

文字数:549文字

カテゴリ:小説

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  • キサラギカナデ

    キサラギカナデ

    ご意見・ご感想

    こんばんは。
    まさか自分のイラストからお話を作っていただけるとは思っていなかったので、
    驚きとともに嬉しい気持ちです。
    涙というイラストを描き始めたときに、まさにこのお話のような場面を想像していて、
    悲しみをベースに『切なさ・優しさ・別れ』というイメージでした。

    なので、このアンインストールという作品を読んだときに自分でも驚くほどしっくりと
    違和感なく話の世界に入り込めました。
    「ねえ、マスター」のあたりはホントに切なくて泣けます…!
    思わず何度も繰り返して読んでしまいました。
    櫻井さんの書かれる文章は繊細で綺麗で、とても素敵だと思います!


    長文失礼しました…;

    2010/10/07 01:11:50

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