青空が広がって、思わず笑み零れるある日。
「・・・っ」
「・・・ん?」
アカイトに迫ろうとしていたバンは、最近買った携帯が鳴って、
「・・・」
携帯を開き、しばらくじっとみつめた後、
「・・・・・もしもし、バンだ。今、すっごくいいところだったんだぞ、マニ」
と、電話をかけてきた相手に不満の声を上げる。
「・・・今のどこがすっごいいいところなんだよ」
小声でぼそっとぼやくアカイト。
「・・・え?・・・そうか、分かった。ぜひとも連れて来い。歓迎する」
「で、何話してたんだよ、バン?」
携帯を閉じるバンに、声をかけるアカイト。
「少し前に、遥音マニという女の子がいたんだが、覚えてるか?」
「ああ、あのゴシック少女だろ?覚えてるよ」
アカイトは、ゴシック系の服に身を包んだ、ある意味異彩を放っていた女の子の姿を思い浮かべる。
「マニから電話があってな。友達ができたから、ここへ連れて来たいって言うから、許可した。・・・いいだろ?アカイト?」
「別にいいけど、でもそのマニの友達って、一体どんな子なんだろうなー」
「それは分からないが・・・何やら、とっても元気そうな子だよとマニは言ってたぞ」
「元気な子か・・・なんかネルちゃんのこと思い出すなー」
「ちゃんづけするな、この変態が」
「うわああああっ??!!ちょ、いつの間にひょっこりいるんじゃねぇーよっ、びっくりすんだろっ!?」
「うるさい。お前が変なこと言うからだろ?それに、思い出すなーってまだそんなに日付更新されてないだろーが。私はまだおばさんじゃないんだよ、分かったか?」
勝ち誇ったようにアカイトに言う男の子のような女の子は、亞北ネル。相棒の携帯片手に日夜荒らしと工作に明け暮れる、黄色とオレンジ色の中間の色みたいな長い髪をシンプルにポニーテールに束ねた、強気な女の子だ。
つい2日前、偶然ここへ遊びに来たところだ。
「わ、分かったよ・・・ネル」
「それでいいのよ。・・・っていうか、最初からそう言っておけば、色々言わなくて良かったものを・・・ほんと、アカイトってばキクちゃんから聞いた通り、ほんっとにへタレなんだからねー」
にこにこと黒く笑みながら、追い討ちをかけるネル。
「・・・もうその辺でやめておけ、ネル。アカイトは私の婚約者なんだぞ」
「あ、そういえば、ちょっとアカイト。どうしちゃったの?この頃、こいつなんかと一緒にいてさー、ミクちゃんどうしたの?捨てたの?だとしたら、「あー、その話はさすがに勘弁してほしいな・・・後で説明するから、な?ネル」
「え・・・、別に、ちゃんと説明してくれるのなら、いいけど・・・」
曖昧に言葉を濁すアカイトに、ネルも曖昧に頷かざるをえなかった。

そのとき、キィと入り口のドアが開く音がした。

「こんにちはです、みなさん」
「お、ここがマニちゃんの言ってたとこかー」
ドアの陰から、ひょこっと顔を出すゴシック系な女の子ともう一人は、ネルに少し似ている女の子だった。唯一、ネルとは違うのは、携帯ではなくハートのステッキを持っているということと、服がどちらかといえば、鏡音リン寄りだということぐらいだった。
「あ」
「ん?」
ネル似な女の子とネル本人の目が合う。
しばらく沈黙が続いた後、
「貴女を巡って、修羅場争いよね!」
「ちがうけど、貴女は誰?」
初対面なせいか口調が幾分柔らかめに、でもはっきり否定するとこは否定するネル本人。
「えーと、私は恋歌ナエル。恋歌は、こいかって読むんだよ!でも、ナエルって呼んでよね!」
にっこりと笑うナエルという女の子に、ああ元気っ子ってまさに、こんなんだよなーとか色んな意味で癒されるアカイト。
「お前、今変なこと考えただろ?」
「うわわぁっ!だからそういう風にいきなり背後から声をかけるなよ、ネル」
「だって、思いっきり変なこと考えてますって、お前の顔に書いてから、あえて、あーえーて、お前の顔を見まいとわざわざ背後から声をかけてやったのにさー」
そう言って、口をとんがらかすネル。・・・できればネルに、ナエルのような性格を見習ってほしかった、そう思うアカイトなのであった、まる。
「だから、悪かったって・・・、ネル」
「ねぇ、マニちゃん。あの赤い人とネルさんって、よりを戻そうとしてるの?」
「うーん、分かんないけど、多分そうだと思うよ!」
「おいおい待て待て。だからナエル、そんなことないからな?それにマニ、お前なんで分かんないとか言った癖にちゃっかり肯定してんだよ。そこは否定しろ」
「「えー、だってぇ・・・」」
「だから、はもるなって」
「何、お前年下に好かれてんだよ。もうちょっと自重しろ」
携帯をいじりながら、アカイトの方を一切見ずに、ネル本人は言った。
「な、何だよ・・・俺は別に年下に好かれようと思ってそうした訳じゃないからな」
そう言った時、今度はアカイトの携帯が鳴った。
「おー、まさかのあの子から?」
「・・・いや、違うな。レトくんからだ」
アカイトは携帯を開いて呟いた。
「レトくん?ああ、あのフードかぶった可愛い男の子?へー、あの子もとうとう携帯を持つようになったかぁ・・・これぞ、次世代の流れだよなー」
「あー、もしもし?俺だ」
ネルの言葉を無視して、電話に出るアカイト。
「俺だ・・・って、なんかオレオレ詐欺の一味っぽいなぁ・・・ん、もはや見た目からそうだっけか」
「・・・ん?何やら、犬っぽい女の子がいたから、声をかけてみたら意外と気さくで話しやすかった・・・そりゃよかったな・・・・え?今から連れてくる?・・・ああ、いいぜ別に。こっちもちょっとした修羅場になりかけてたからな・・・ん、レトも修羅場好きか、分かった。・・・じゃ、またあとでな」
全体的に、かなりグダグダな会話をして、携帯を閉じるアカイト。
「で、何を話してたんだ?」
「レトくんが犬っぽい女の子を連れてくるってさ」
バンに返事するアカイト。
「へー、そのレトくんって、可愛いなりに頑張ってるねー、まるでどこかのヘタレさんとは大違い」
ネルはアカイトを横目で見て、くすっと笑う。
「ナエルちゃんは、別に誰が来てもいいよな?ほら、ここって、割と色んな人たちが遊びに来るからさ」
「私はいいですよ!私はただ、人の恋路を応援したいだけなんだよね!」
「恋路・・・か。もう俺には関係のない単語だよなぁ・・・」
「はれ?もしかして、アカイトさんだったっけ、もしや恋路に取り込まれちゃったの?」
切なそうに呟くアカイトに、ナエルは食いつく。
「え・・・でも、今はほら、もう・・・無理だからさ」
「そんなことないよね!諦めたら、そこで全てが終わるのよね!だから、だから・・・そんなに切ない顔はやめてほしいよね・・・」
「ほーら、お前が変に感傷に浸るから、ナエルまで暗くなっちゃったじゃない」
ネルがナエルを見て、アカイトに言う。
「・・・ごめんな、ナエル。確かに、ナエルの言う通りだよな!諦めたら終わる・・・まさにその通りだよな?バン」
「そうだな、実験でも実際にやるのと、ただ手順をノートに書くだけでは大きく違うからな」
アカイトの必死なフォローの言葉に、バンも頷く。
「だから、気にする必要はないんです!・・・ね?ナエルちゃん」
マニはナエルに笑いかける。
「・・・ここって、いいところだよね。みんなが、すーっごくあったかいよね・・・」
ナエルの淡く微笑する顔を見て、その場にいた誰もが切なくなった。
その元気さの裏には、こういう表情が常にあるということ。
そんなことを改めて、思い知らされた今日この瞬間だった。

そんな、区切りのいいタイミングで、またキィと入り口のドアが開いた。
「こんにちは!あら、また一区切りついたみたいですね!何で、もっと早くここに来れなかったんだろう・・・」
悔しそうに呟くモコに続き、
「こんにちは、今回はちゃんとレトくんと一緒に登場です!」
「・・・こんにちは」
ジミが嬉しそうにそう言って、レトもジミの服を当たり前のように掴んでこちらも嬉しそうにはにかんで挨拶した。
その次には、
「最近なんだか修羅場化してますよね~、嬉しいですよ~♪」
「・・・そんな風に面白がったりしたら、だめだろ?フワ」
「えー、だってぇ・・・」
フワが相変わらずふわふわした様子で呟き、そんなフワに密かに片思い中のグルトが返事する。
グルトの言葉に、唇を尖らせつつも、少し嬉しそうなフワに、
「やっぱり、こういうのが一番微笑ましいよね!」
ナエルは光よりも速く食いつく。
「そうだにゃんね~、でもこういうのって実は報われない恋なんだけどにゃー」
もはや毒舌家として定評になりつつあるミンはそう呟きながら登場した。
「えー、そんなことないですよね!どんな恋でも、とりあえず相手に気持ちは伝わるのよね!」
ミンの毒舌言葉に、反論するミン。
「・・・ま、それはそうだにゃんよ。何しろ、3年目でやっと一応両思いになる2人もいるにゃんしー・・・にゃおん」
意外と素直に、あっさり引き下がるミンなのであった。
続いてドアの陰から、
「・・・こんにちは」
『こんにちは、みんなすでに楽しそうだな』
「こんにちふわあああ・・・」
まずミドリが控えめに挨拶をし、モノクロ状態のシキが部屋にいるみんなを見て、楽しそうに目を細め、マツキは挨拶しながら欠伸をするという器用かつ可愛い仕草をしてのけた。
「あー、ミドリさん!」
ミドリの姿が見えるやいなや、ミドリに駆け寄るジミ。
「こんにちは!私も、ついさっき来たとこなんですよー!」
そう言って、ミドリに笑いかける確信犯ジミ。
「・・・そ、そうなん・・・ですか・・・っ」
ミドリは顔を朱色に染め、そっぽを向く。
「・・・うわ、確信犯ここにあり、だにゃんねー」
その様子を見ていたミンは、思わず呟く。
「いわゆる、これが恋というものよね!」
「そうなんにゃんねー」
ナエルがひょっこり現れて呟いた言葉に、適当に頷くミン。
「・・・ナエルにゃんは、いっつもこういう風だにゃん?マニにゃん」
隣にいるマニに聞いてみるミン。
「そうですよ?それがどうしました?」
きょとんとして返事をするマニ。
「・・・・・一緒にいて、よく疲れないにゃんねー、・・・ある意味尊敬するにゃんよー」
「・・・そんな」
恥ずかしそうに照れるマニに、
「え、今のどこの会話に照れる要素があったんだよ?」
「アカイトは黙れにゃ。・・・余計なことは言わないでほしいにゃんよ」
「うわ、この脅迫猫」
「脅迫猫だなんて言わないで下さい!」
「えっ・・・、だって、ほんとのことだし」
「そうだにゃん、モコにゃんもっと言ってやれにゃんよー」
「・・・お前が言うなよなー」

・・・などと、いつものように騒動めいた会話をしている時、

全員揃って、もう帰る時にしか出番がないはずのドアが、小さくキィと開いた。

「・・・こんにちわん」
ドアの陰から現れたのは、犬耳と尻尾が生えて、服は鏡音リン寄りの服を見に纏った女の子だった。
「・・・羊の次は犬かよ・・・」
思わずアカイトは呟くが、
「・・・そういえば、マスターも犬好きだったなぁ・・・でも、彼氏はパンダなんだよなー」
思い出したように呟き直す。
「え、マスターの彼氏って、パンダにゃおんか??!」
アカイトの言葉に、驚くミン。
「え?・・・まあな。いっつも鞄にぶら下げている小さいパンダなんだけどな」
「へぇー」
「・・・それで、この子は誰ですかぁー?もしよろしければ、あとで写真撮ってもいいでしょうか~♪」
「・・・・写真はだめだわん」
意外ときっぱり断る犬少女。
「なんか、キャラがかぶってるにゃんよー」
犬少女を見て、ミンは嘆く。
「それで、貴女は誰だ?」
このままでは埒があかないと思ったのだろう、部屋のみんなを代表してバンが仕切る。
「私は、吠音ワンといいます!吠音は、ほえるねと読みます。それで、私・・・」
そこで一旦言葉を切るワン。
「犬になりたいんです!」
「奇遇にゃんねー、私も猫になりたいにゃおよー!」
ミンがそう言い、ワンとミンは犬猫同士なのに抱きつく。
「・・・なんで犬と猫が抱きつくんだよ・・・」
その様子を見て、うんざりしたように呟くアカイト。
「まぁ、いいじゃないか?犬と猫だって、犬猿の仲って訳じゃないからな」
そんなアカイトに、バンは肩をすくめて言った。
「この犬耳って付け耳ですかぁ?」
フワが興味深そうに、ワンの耳に触れる。
「はい。ですが、断耳はしません。あと、断尾も」
「ということは、尻尾も付け尾なの~!かぁわいいわね~♪」
「・・・グルトにゃん、しょうがないにゃん。いつかは、振り向いてもらえるにゃんお?」
ミンは、がっくりと肩を落とすグルトを慰めるように言った。
「・・・・・」
好奇心に負けたのかレトはワンの尻尾に触れる。
「は、はうっ!?尻尾は触っちゃだめだわんっ!」
耳は何とも無かったのに、顔を赤くしてレトから逃げるワン。
「・・・だめ、なの?」
レトは、きょとんとしたように首を傾げる。
「レートーくぅん?私より先に尻尾に手をかけるとはお主・・・なかなかやるですね~♪」
なんだか怪しい日本語を使いながら、フワはレトに笑いかける。
「だって、尻尾・・・」
「しっ、尻尾は、だ、だめだわんっ・・・!それだけは、勘弁してくれだわん・・・・っ!」
ワンは首をぶんぶんと横に振る。
「レトくん、女の子が嫌がることはしちゃいけないんですよ?」
事態を見かねたジミは、レトに言い聞かせる。
「・・・そうなの?」
「そうですよ」
「・・・じゃあ・・・やめる」
「それでこそ、可愛いレトくんですよ~」
フワの言葉に、ジミは頷く。
「・・・でも、私も尻尾触ってみたいかも・・・」
「ちょ、ジミにゃん、寝返るのかにゃん!?」
「今度、3人でワンちゃんの尻尾触ろうぜ大作戦やりませんか~?」
「それ、楽しそうですね!」
「・・・僕、やる」
「うわー、ワンちゃん可哀想だなぁ・・・」
傍観組のアカイトは思わず呟く。
「そうだな」
さすがに出る幕がないらしく、バンも苦笑いで答える。
「これぞ、恋の生きる日常ってやつよね!」
「・・・ナエル、もう意味分からねーよ」





・・・こうして、青空が見守る今日という一日がまた過ぎ去っていくのだった・・・。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【コラボ】 恋路娘と犬少女の登場とやっぱりみんなでいつもの日常騒動を 【亜種】

こんにちは、ちょっとしたお祭りに行ってついでに後輩たちとだらだら過ごしてきたもごもご犬ですこんばんは!
・・・ちなみに、私の現彼氏は鞄にぶら下げているパンダです(笑)
分かる人には分かります←

今回は、新たに恋歌ナエルちゃんと吠音ワンちゃんの2人に出演してもらいました!2人のマスターには感謝です、ありがとうございました!

プロフィールに、亜種コラボ小説についてと登場人物一覧表みたいなのを載せてます!よろしければ見てくれると嬉しいです!

今後は当分作品を作れそうにないですが、気長にお付き合い下さると書く気力が湧いてきます♪
これからも、よろしくお願いします!><

閲覧数:190

投稿日:2010/04/25 17:16:41

文字数:5,881文字

カテゴリ:小説

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  • 神前

    神前

    ご意見・ご感想

    ナエルのマスター(照)の神前です…!
    うちのナエルこんなに可愛かったんですね…!何だか感動してしまいました笑
    登場させていただき、ありがとうございました!
    密かに応援しております^^

    2010/04/25 22:18:35

    • もごもご犬

      もごもご犬

      >神前さん

      そう言ってもらうと、とっても嬉しいです♪
      ナエルちゃんは癒し系と元気系が合わさって、とても萌えr・・・こほん←
      いえいえ、こちらこそありがとうですよ^^
      また今後も読んで下さると嬉しいです><!


      >てと・らさん

      こんにちは?のこんばんは!
      やっぱり、自分の亜種が他の亜種たちと話してるってのはドキドキしますよね^^
      期待に添えられたようなので良かったですよ><
      こちらこそ、ありがとうございました!
      今後も、よろしくお願いします★

      2010/04/26 19:15:10

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