「全治一ヶ月…?!」
「ええ、亀裂骨折ですから少なくともその位は…。」
「そんな!来週には大事な試合が…!」
「まぁ…残念ですが試合は無理ですね。」
「そん…な…!」
「芙花先輩っ!」
「何とかして!ねぇ何とかしてよ!お願い!この試合に勝てば全国に…!」
「今無理をすればテニスどころか走れなくなるかも知れないんですよ?」
「でも…でも!でも…!」
「先輩…。」
「嫌ぁあああ!!」
「芙花先輩!先輩落ち着いて下さい!」

どうしてこんな事になったの…?いつも通りテニス部で朝練してただけなのに…いきなり変な化け物がコートに入って来てエースの芙花先輩を始め何人もの選手が倒れて来たフェンスの下敷きになった。もう直ぐ県大会で選手に選ばれた芙花先輩がどれだけ頑張って来たかよく知ってた。朝早く来ては基礎練習を欠かさず、放課後は毎日暗くなるまで練習して…だけど私達後輩の練習にも嫌な顔一つしないで付き合ってくれて…。

「先輩…きゃっ?!」
「わっ?!」
「あ…えっと…ごめんなさい…!」
「大丈夫ですけど…あの、大丈夫ですか?泣いて…ますけど…。」
「辛いのは…私じゃないです…。せ、先輩の方が…何百倍も…!うっ…!うぅっ…!」
「流船君、お見舞い終わ…え…?」
「あ、ち、違う違う!俺じゃないって!」
「うわぁ~~~ん!!」
「えぇっ?!」

気持ちの整理が付かなくて知らない人の前で大泣きしてしまった。貰った苺ジュースを飲んでやっと涙が止まった。

「すいませんでした…。」
「いや、別に良いよ、君は何も悪くないしね。」
「ご、ごめんってば…!だってまた女の子泣かしてるのかと思っちゃって…!」
「人聞き悪いよ。」
「あぅ…。」
「えっと…わ、私が勝手に泣いちゃっただけなので…。」

誤解させちゃったみたい…どうしよう?と言うか今更だけどこの人達誰?同じ歳位かな?

「あの…どちら様でしょうか?高校生…ですか?」
「ああ、翔藍学園一年の蕕音です。」
「伽音芽結です。」
「西の台高校の曖兎音イコです。」

軽い自己紹介の後、私はぽつぽつと先輩の事を話し始めたのだった。二人は茶化すでもなくて、真剣に話を聞いてくれた。

「じゃあその先輩は…。」
「はい…大会無理だって言われて…。」
「でも…二年生なら来年とか…。」
「芽結。」
「あ、うん…そうだよね…。」

来年出られるとは限らない。だからこそ先輩は今度の試合に賭けていたのに…。そう思うとまた涙が滲んだ。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

コトダマシ-24.また女の子泣かしてるのかと-

閲覧数:201

投稿日:2010/10/19 21:42:59

文字数:1,032文字

カテゴリ:小説

クリップボードにコピーしました