「うぅ…酔った…」

「あれだけで酔ったの?」

「僕は普段家にこもりっきりだから…空間が歪んだら、酔うよ…」

「だらしないわね。しっかりしなさいよ」



学校の中庭から移動した場所は、白が無限に続く真っ白い空間だった。

あたりを見回しても、そこに続くのは白、白、白。

初音はなんで酔わなかったんだろう。



「…初音はなんで酔わなかったの?」

「酔い止めの薬飲んできたから」

「…えぇー」



そんな卑怯な。

其処へ、





「はじめまして、若き研究者。
 あなた方が来るのを待っていました」




振り向くと、そこには赤い髪(というよりは、桃色の髪か?)をした女性が居た。




「待っていた、だと?」

「あら…貴方、私が遠い昔の愛した人にそっくりね。容姿も、声も」

「…僕は君を知らないが、というか誰だ?きみは」

「あんた誰よ?」

「これは失礼。わたくしは…そう、神とでも言っておきましょうか」




神。この女性が、神なんぞには見えない。

見たところ、何処にでも居そうなごく普通の女性だ。



「その言い方は…他の呼び名もあるわけ?神と名乗る者」



初音。なんで若干挑発する態度なの?



「くす…わたくしは、元々人間だったもので…」

「そういえば、さっきそれらしきことを言ってたものね」

「そうですよ、私は人間だったころに名前もありました」



彼女は「人間だったころ」と言った。ならば、「神」と名乗っても不思議ではない。



「ならば、その名前を教えていただけない?『神』だと、呼びづらいのよ」

「知りたがり屋ですね…ルカ、と申します」

「そう。ルカ、あなたに用があるの」



初音は神に対して上から目線。

なんと失礼な。



「なんですか?」

「あんたには『神のスゴロク』というものがあるでしょ?それを、私に貸しなさい」



…もう命令じゃんか。



「なぜです?」

「私はこの世界が気に入らない…だから、世界を私の思うようにしたいのよ。」

「つまり、神の座をよこせ、と?」

「そうよ」



初音。話の次元が違いすぎて、ついていけない。



「初音、それはどういうことだ」

「そういえば、貴方は私の考えてることが知りたい、と言っていたわね?
 私の計画は…私自信が、神になることよ」

「ずいぶんおもしろいことを、お言いになさるのですね…
 私も、愛した彼が死んで、その彼を戻したくてここに来ました。
 でも、先代の神がしたように…そう簡単には、渡しませんよ?」



初音はナイフを取り出し、‘神’に向けた。

ルカは自分に刃を向けた‘研究者’を見て、薄笑いを浮かべていた。

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【リレー】僕と彼女の不思議な日常 7

閲覧数:626

投稿日:2011/10/20 23:09:46

文字数:1,136文字

カテゴリ:小説

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