イミテーション
口惜しく噛みしめた
滲む歯痒さを押し殺す
零れ落ちる涙が
ピント横ずらす前に

過ぎた幻と知りながら
痛い現実に背を向けて
二度と戻れないねと
視線だけで頷いた

螺旋階段二人で
ゆけるなら怖くはないから
暗い闇をこのまま
逆さまに駆け落ちるまで

例え許されなくても
構わない希望もいらない
光る伝を断ち切る
運命にナイフ突き刺す

右から左へ去り際
嗤ったプラチナダイヤ
全ての始まりはあの日
冷たくなる夜の

イミテーション
口火切る感傷は
滲む情景に促され
崩れ出した世界の
ドラマ彩りを与え

洒落た台詞ほど続かない
未来永劫に響かない
だから口は結んで
澄まし顔の唇を……

撓わな果実潤す
堰を切る求めに応じて
喉を鳴らし目配せ
骨の髄とまで感じて

モラルに竦む身体を
迸る毒で慰めて
抱き寄せてくれるなら
もう愛でさえもいらない

睫毛に戸惑い瞞し
星月夜の物語
小指の紐解き匿い
温かさを設って

イミテーション
鈍色に輝いて
滲む新月を照らし出す
後ろめたい事実の
ニヒル醸し出さないで

透けた目の色を窺って
奥の鏡に脅かされ
逃避行に逸れる
行き止まりを調弄し

イミテーション
口惜しく噛みしめた
滲む歯痒さを押し殺す
零れ落ちる涙が
ピント横ずらす前に

過ぎた幻と知りながら
痛い現実に背を向けて
二度と戻れないねと
視線だけで頷いた