「それで、その朝の10時過ぎまで、ヒュンダインさんを待ってたんだ」
リンちゃんは続ける。
「ふうん。で、一緒にビデオに出てくれたわけ?」
レンくんが聞く。
「うん!一緒に、ちょっとからむ感じでね。楽しかったよ」
リンちゃんは、ニコニコして言う。
「私とサナギが演奏してると、ドラムの影から急に、あの人が顔を出したりさ」
レンくんは、聴きながらちょっと思った。
(…なんだよ。僕たちが心配していたときに、こいつ、結構楽しんでたんじゃないか)
●もうひと晩泊まったら?
そんな気持ちを知らずに、リンちゃんは続ける。
「そんで、とりあえず撮影も終わったんだ。くたくただったよ」
そう言って、頬を膨らませる。
「ヒュンダインさんの部分は、夕方終わったんだけど。アタシたちの撮影は続いててサ。終わったの、月曜の夜の8時になっちゃったんだ」
レンくんも応える。
「よく、そんなに続けて働かせるよなー」
「だよね。で、アタシもう、くたくただったけど帰ろうとしたんだ」
「うん」
りんちゃんは、眉をしかめて言う。
「そしたら、またあの人が言うんだ。あの、ベニスズメさんが。“今日も遅くなっちゃったから、もうひと晩、ここのホテルに泊まったら?”って」
●3連泊はまずいぞ!
「したら、サナギがアタシに言うのよ。“ねえ、今日だけ泊まっていこうよ。もう疲れて動きたくないよ”って」
「サナギちゃんが?」
「うん。だからさ。アタシも、もうひと晩だけいいかなって。ホラ、月曜の夜にメールしたでしょ、レンに」
レンくんはあきれ顔でうなずく。
「ああ、“今日も友達の家に泊まるよ”って、あれ?」
「うん。ホテルの部屋は、すごく快適なんだよ。サナギとのツインの部屋なんだけど」
「でもお前、いくら仕事といっても、3連泊はまずいぞ」
レンくんの言葉に、めずらしくしおらしくうなだれるリンちゃん。
「うん。あの時、無理にでも帰っときゃ良かった。だって、あの人がまた、変なこと言い出したんだ」
そういって、おびえたような顔をした。
「私とサナギが、泊まろうとして部屋で寝る支度してたら。部屋に内線電話がかかってきたの。ベニスズメさんからね」|||(-_-;)
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