ゴールデンウィークってのはあっという間に明けてしまうもので。それはどの学生もあと数日欲しいとか思ってしまう時期なのだろう。五月病ってやつだ。
 神威がくぽという少年はそんなこともなく、今日もまた文庫本を読み耽っていた。
 そういえば。
 神威はふと思い出したように呟いた。

「転校生がくるんだったな……」

 それと同時に、チャイムが鳴った。



≪夢と実験とラプソディー【オリジナル】≫



「はい、席につけ男子共喜べ転校生じゃー」
「いや毎回思うけど適当過ぎないか」

 もはやメイコ先生登場時の神威の心の中でのツッコミは恒例行事になりつつあっていて、それを神威自身は苦とは思ってもいなかったようだった。

「はい、それじゃはいっていいよー」

 教室の扉が大きく開かれたのはその時だった。
 入ってきたのは、薄桃色の長い髪が特徴的な少女。

「――はじめまして。イアと言います。
 この学校にきたのは親の都合でここにきました。
 まだ慣れないことがあるのでまだまだお世話になるところがあるかもしれないです。
 けれどよろしくですっ!」

――イアがこのあと、男子たちのハートをがっちり掴んだのは言うまでもない。





 次の時間はさっそく実験なのである。この学校は普通高校なはずなのだが物理系の主任が彼女――リリーであるためか、物理系の科目に重点が置かれている。

「だからって朝から実験はきついよねえ……」
「しゃーないだろ。時間割はこうなってるんだ」
「そりゃそうだね。……でなんでこのグループなんだろうね?」
「……」

 実験は基本四人班で行われる。なので、今いるメンバーは神威、ルカ、レオン、そして――

「……えっと、イア……さんだよね?」
「…………はい」
「僕はレオン。よろしくね」
「私はルカ! こいつは幼馴染の神威」
「こいつとはなんだこいつとは」
「仲いいんですね」
「そりゃあまあ! こいつとはもう10年近い付き合いだからねー」
「……そのうち半分は会話すらしてないがな」
「……?」

 神威の言葉にイアは首を傾げた。
 その動作を見て、神威は継ぎ足したように一言。

「――ああ、ちょっと事故があってね。それでだ」

 それを聞くと、イアはかけていた眼鏡をずり上げ、話を理解したらしく、なんどもなんども頷いていた。
 神威はそれをみてへんなやつだな、と思った。
 だけど。
 そんなのも面白いな、と神威は思ったのだった。


つづく……?

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

夢と実験とラプソディー

第6話。

次の話、「月と幻妖のフェアリーテール」に続きます。

前作「鯉と週末とアイロニー」:http://piapro.jp/t/ezhl 05/03
次作「月と幻妖のフェアリーテール」:

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投稿日:2012/05/04 00:10:42

文字数:1,043文字

カテゴリ:小説

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