演奏が、全て終わったライブハウス。ホールの中はまだ、ザワザワとしている。
「楽屋に行ってみましょうか」
りりィさんは、レンくんに言った。
「ええ、そうですね」
出口やロビーに向かう観客たちに、さからうようにして、2人は楽屋の方を目指した。
「あれ?テトさん」
レンくんは、ホールの壁に1人でもたれかかって、携帯の画面を見ているテトさんを見つけた。
「あ、こんにちは」
彼女は言って、笑いながら親指を立てて「goo!」の仕草をする。
レンくんもニヤッとして、仕草を返した。
これは仲がいい2人が会うと、なぜか交わすお決まりの挨拶なのだ。
「あ、りりィさん、こんにちは」
「テトさんも来てたのね」
2人も挨拶を交わす。
3人はそろって、ライブの出演者の楽屋を目指した。
●いいライブでしたよ!
楽屋では、何組かの出演バンドが、それぞれの訪問客と話したり、くつろいだりしている。
「あ、お兄ちゃん」
部屋の隅で話をしていた、リンちゃんとコヨミくんは、レン君たちの訪問に顔を上げた・
「やあ、みなさん。来てくれてありがとう」
「お疲れさまです。ライブ、よかったわよ」
テトさんが、持参した花束をそれぞれに渡す。
「とても楽しかったですよ」
りりィさんの言葉にリンちゃんはちょっと照れて赤くなった。
「ずいぶん、飛ばしちゃったけど、楽しんでくれて良かったです」
「お前にしては上出来だったよ」
レンくんの言葉に、ちょっとふくれながらも笑っている。
レンくんは、近くで、コヨミくんのバンドのメンバーと話している霧雨さんを見つけた。
「あ、霧雨さん。久しぶり」
「あら、どうも。いい演奏だったよね!」
レンくんはうなずいた。そして、そばに置いてある“はっちゅーね”を見て、言った。
「演奏も良かったけど、きょうも随分おしゃべりしたね、それ」
「そうね~」
霧雨さんは、可笑しそうに笑った。
●あたしが連れ去ってやるよ…
その時、楽屋の入口が何やら騒がしくなった。
ホールの係員の声がする。
「ちょっと、お客様たち、困ります、大勢で押しかけては」
みんなが騒ぎの方を見やると、何やら大勢の男の人の集団が、楽屋に入ろうとしていた。
「リンちゃ~ん」という声も聞こえる。
それを聞いて、リンちゃんは首をすくめた。
「うわ、あれ、あたしのブログのファンだ」
「おまえ、そんなに人気あるの?」
レンくんが不思議そうに聞く。
「うーん、あたしというか…。あたしがブログに“はっちゅーね”の不思議な話を書いたら、なんかそれ以来、追っかけてくるのよ」
「追っかけ?」
「うん。生きてる人形の不思議を、もっと話しましょう、とか言ってサ」
「妙な人たちだね。コワイね」
テトさんは、苦笑いをした。
「あんなにたくさん、こんな狭い部屋に入られちゃ、ちょっと困りものね」
りりィさんも言う。
すると、何か考えていた霧雨さんが、ふいに立ち上がった。
手には、そばにあった“はっちゅーね”を持っている。
「よし、一つ私が解決しましょう。ちょっと彼らを外に連れ去ってくる…わネ!」(^_-)v
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ブクマつながり
もっと見る霧雨さんのブースに向かって、ルカさんがゆっくりと歩いてきた。
「ルカさん!」
「たこるかちゃん、おつかれサマ」
彼女は、たこるかちゃんに向かって微笑んだ。
「あら、れおんさん。どうしたの?」
たこるかちゃんは、ルカさんにこれまでのいきさつを、手短かに説明した。
「そうなの!れおんさん、リンちゃんと“...玩具屋カイくんの販売日誌(192) リンちゃん+“はっちゅーね”の行方は?
tamaonion
“はっちゅーね”の人形を持った、リンちゃんに、どこかアヤシイおじさんは、話しかけつづけている。
「アナタもかわいいし、人形もカワイイねー。」
リンちゃんはちょっと困って、でも強気に応戦する。
「でも、おじさん。写真ばかり撮ってるけど、私が目的?人形が目的?」
おじさんは、ニコッと笑って答えた。
「ウ...玩具屋カイくんの販売日誌(189) リンちゃん攻防戦、開始!
tamaonion
ブースの前で、コヨミ君と、れおんさんは、にらみあって立っていた。
ザワザワ、と騒ぎ出した男の子たち。
それを見て、テトさんは思わず、コヨミ君に声をかけた。
「ねぇ、どうしたの? もめ事はよくないですよ」
フッと我に返ったように、コヨミ君は彼女の方を見た。
「あ、テトさん。ごめんごめん。ちょっと、大人...玩具屋カイくんの販売日誌(194) 新商品で勝負だ!
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お店の売り場には、コスメや、美容関連のアイテムが、いろいろ並んでいる。
それを、レイムさんは目を丸くして眺めている。
「ワタシ、こういうの詳しくないんだわ~」
そうつぶやく彼女に、後ろを歩いているぱみゅちゃんは、諭す様に言った。
「そうそう。あんたはちょっと化粧っ気が無さすぎるからネ。少しは知っとい...玩具屋カイくんの販売日誌(179) レイムさんのオカルト理論 (その1)
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「はーい。コーヒー、入りましたよ」
ルコ坊がカップに入ったコーヒーを、レン君たちに運んできた。
ちょっと不思議な雰囲気の、りりィさんのお店「星を売る店・上海屋」
りりィさんを送ってきたレン君は、美味しそうにそれを飲んだ。
「いつも、美味しいね。ルコちゃんの淹れるのって」
「へへ、どーもありがとう」
...玩具屋カイくんの販売日誌(187) 困ったヤツの目的は?
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ゆくりさんのお店で、バイトのレン君が、青くなっていた、その頃。
東京・有明にある東京ビッグサイトで、人気のイベント「雑貨&コミック・フェア」が開かれていた。
企業のブースをはじめ、コミックやフィギュアを作る有志や同人の人たちが、それぞれにブースを出展している。
会場のホールの一角に、移動式自動車のカ...玩具屋カイくんの販売日誌(182) コミックフェアで、ひと騒動
tamaonion
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ご意見・ご感想
enarin
ご意見・ご感想
今晩は! 早速拝読させて戴きました。
ライブも終わって、一段落…というわけにはいかなくなったようですね~。バンドの熱狂的ファンならいいのですが、おっかけブロガー、それも、はっちゅーね等の不思議関連での熱狂的ファンとなると、ちょっと困ってしまいます。まさに、怖いですね。
さーて、ここで霧雨さんの出番です!なんか、”なだめて説得して終わり”というわけにはいかないと思うのですが、楽しみです~♪ なんかはっちゅーねさんの話題を更に広げちゃいそうですね。
続き、楽しみにしております!
ではでは~♪
P.S 寒い毎日ですね。寒いところに長時間いるとか、少しの油断で風邪を引きそうになります。是非ともご自愛下さいませ。
2012/12/04 18:59:24
tamaonion
enarinさん、感想をありがとうございます!
>おっかけブロガー、それも、はっちゅーね等の不思議関連での熱狂的ファンとなると、ちょっと困ってしまいます。まさに、怖いですね。
ですね?。ネットのユーザーは、リアルで行動するとたまにエキセントリックになってしまうけれど、その標的の人は、心穏やかじゃないですよね(笑)
>なんかはっちゅーねさんの話題を更に広げちゃいそうですね。
その通りですネ。曲者には曲者、という感じで、活躍させたいと思っています。
ボカロにしても他キャラにしても、ネットで付加された性格をやや参考にしていますが、いろんな個性があって、動かしていても楽しいです。
また、ぜひ感想を聞かせてください!
このところノドをやられています。今年の風邪の傾向はけっこう長引く感じですので、健康にはお気を付けください!
それでは、また。
2012/12/05 22:57:53