メカクシ団という団体がある。

 ニジオタコミュショーヒキニートでも問題無い、なんとも訳の分からない団体である。

 構成人数はおよそ十名と小さな団体である。活動内容は、『悪』。

 如月伸太郎にとって、その団体は小さな幸福と思えた。

「……もし、夏が夢を見せるとするなら」

 伸太郎は誰にも聞こえない呟きをして、107と書かれたドアにあるノブをひねった。

(――君を連れ去る前に、行くことが――)

 彼はメカクシ団に入っていた。

 似ているような、存在にも出会えた。

「……コノハ、どうした?」

「すこし、ひまなんだよ」

「そっか」

「……ぐー」

「寝るならせめてなんか言ってくれよ」

 彼は笑いながら――ソファに腰掛けようと歩いた。

「――ねえ、私と遊ぼうよ」

「構わないでくれよ、俺だって――」

 そこまで言いかけて、彼はその声が誰からのものか気づいた。

「……アヤノ!?」

 振り返るも、彼の目の前には、ただカゲロウがユラユラと揺れるだけだった。



≪ロスタイムメモリー 3【自己解釈】≫



「ご主人のことが心配なんですよ。どうしたんですか?」

 そんな悲しそうなフリをしないでくれ、と伸太郎は呟きベッドに横たわった。

 所詮エネはただの“隣人”であるに過ぎない。

 そんな人間でもない存在に――触れられたくない。

 伸太郎はそう考えていた。

 どうせ、今日もいつものペースを守っていこう。

 昨日のペースを守っていよう。






 そうすれば、君の温度を忘れないと思うから――











「どうせなら、夢を見よう。エネ」

「夢、ですか?」

「ああ、そうだ。夢なんて叶うものはひとにぎりだ。なら、ならだ」

「――その夢を見てしまおう、って?」

 伸太郎はエネの言葉に頷いた。

「それじゃあ、明日も見えないままですよ?」

 ――それでもいい。

 伸太郎は小さく呟いて、パソコンの電源を――躊躇いなく切断した。

「え……」

 エネは反応することもできず、黒い画面に飲み込まれていった。




ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

ロスタイムメモリー 3【自己解釈】

閲覧数:965

投稿日:2013/03/31 22:10:49

文字数:896文字

カテゴリ:小説

オススメ作品

クリップボードにコピーしました