「カイト・・・」
私はカイトの部屋に入るなり、ベットに寝そべるカイトの上に倒れる。
「え、どうしたんですか?」
カイトは、目を丸くして私を見る。私は何も言わずにカイトに、ぎゅっとしがみついた。
「・・・マスター、何があったのか、話して下さい」
優しい声色で言ってくれる。
「ねえ、カイト。もう、ここまで待ったんだから、言っても大丈夫だよね・・・?」
泣くのを必死にこらえて、言う私。何を言ってるのか、ほんとは分かってるのか分かってないのか分からないけど、カイトは頷いてくれた。
「大丈夫です、言ってもいいですよ」
その言葉だけでも、すごく安心できた。
「あの人のこと、・・・」
「大嫌い、ですか?」
「・・・」
「僕にとっては、邪魔な存在ですからね。マスターが大嫌いなら、二度と話も聞かなくて済みますし」
そう言って、にっこり笑うカイト。
「だって、マスターがあの人の話をする度に、密かな殺意を抱いていましたからね」
「そっか・・・そうだよね」
「はい」
「・・・ねえ、カイト」
「何ですか?」
「・・・身近にいすぎて、時々忘れてたこともあったけど、私、カイトのことが大好きだよ」
「僕も、マスターのことが大好きです。近くにいるのに忘れるのは、大切なものだからこそですよ。そんなに、僕のことを・・・」
カイトは、しがみついたままの私の背中に手を回した。
「嬉しいです。とても」
「ところでさ、忘れるにはどうしたらいいの?」
「僕と一緒に、居ることです」
「じゃあ、一緒に居るー!」
「今は、寝るには早すぎますけど、どうしますか?」
「んー・・・。このまま、もう少しだけ、カイトとこうしてたいな・・・」
ちょっと本音を織りまぜた言葉を呟くと、
「少しだけと言わず、ずっとこのままでもいいですよ」
という返事がきた。
「もうしばらくだけ・・・」
なんか眠くなって目を閉じると、背中に回された手の力が少しだけ強くなったような気がしたけど、全然いやじゃなかった。むしろ、安心した。ような気がした。
・・・大好きなバンドのメンバーと、大好きな先生が、かっこよく踊っている夢を見た。
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