――雨の降る、放課後。
貴女は“ある男の子”に逢います。
それは、とても偶然で、でも必然で。
それはそれは、素敵な出会い・・・・・・
ではなかったのです。
【アナタノカレシ~鏡音レン(ドS編)~】
ある部活動が終わった放課後。
今日の天気予報はとても晴れると言われていました。
勿論、朝方から昼間にかけては晴天でしたが、貴女が部活動をし始めると、とんでもない程の雨が降り始めたのです。当然、傘を持ってきてはいない貴女は、昇降口で立ちつくし、雨を困り果てた顔で待っている人も、傘を差し伸べてくれる人もいないのに、そこにずっといました。
すると、貴方の後ろに現れる人影が。
「おい、そこ邪魔だぞ、どけよ。」
突然、声をかけられたかと思うと、このような乱暴な言葉が投げかけられてきました。後ろを振り向くと、最近女子に「カッコイイ!」と騒がれている転校生、“鏡音レン君”が立っていました。でも、貴女は少し嫌な気持ちになって、退こうとはしません。
そんな貴女の姿に呆れたのか、彼は無理に突破をしようとはしませんでした。
「何、アンタ、傘忘れたの?」
いくら彼が騒がれている人間であろうと、初対面の人間に“アンタ”呼ばわりをされて、貴女は少しの嫌な気持ちが膨張し、もっと嫌な気持ちになってしまいます。
けれど彼は、それに気づいてはいません。
のんきに自分の持っている折り畳み傘を振り回し、やがて口を開きました。
「やっぱり忘れたんだ。俺、丁度持ってるし、貸してあげようか?」
彼にしては気が利くことを言ってくれる。
貴女はその言葉を信じ、彼の持っている折り畳み傘に手を伸ばします。
すると―――
貴女の伸ばした手を、彼に掴まれ、貴女はバランスを崩してしまいます。貴女はバランスを崩すと、彼に抱きつくような形になり、彼は笑い声をあげました。
「あははっ! 何々、アンタ、俺に抱きついちゃう程好きだった?」
貴女は、そんなつもりではないのに、彼の所為でこうなったのに。と思い、苛々と恥ずかしさに顔を赤くし、彼が掴んでいる貴女の手を振りほどこうとしました。
しかし―――
彼は一方に放そうとはせず、貴女を引き寄せ、こういいます。
「アンタって結構可愛いじゃん。俺・・・アンタのこと好きになっちゃったかも。」
貴女は、その言葉で恥ずかしさと苛々がどこかにいってしまいました。
彼の整った顔立ちと、そして、低く呟かれる声。
それに惹かれてしまったようです。
数分の時間が経つと、雨は止みました。
貴女は“ドキドキ”と鳴っている、心臓の音が彼に伝わらないように、彼を避けました。彼はキョトンとした顔で、貴女を見ています。
「雨、止んだな。じゃあ、俺、帰るから。」
そういって、彼は雨が止み虹の出た空の下に歩みを進めます。
そんな彼は、貴女に振り向かず、手を振り、こういうのです。
「今度の雨の日は、傘、持ってくるなよ。」
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