れおんさんとルカさんが、会場の自分たちのブースで、商品を裏から出し、積み上げていると。

会場のむこうから、１人の女の子がこちらに歩いてきた。

「あっ！　リンちゃんだ！」
めざとくその姿を見つけ、ブースの横にいた男の子たちが騒ぎ出した。
「リンちゃんん！」「うわぁ、本人だぞ！」

ブースに群がっていたお客の中にいた、リンちゃんのいわゆる「おっかけ」の子たちだ。
今日も、このメッセの会場に来るらしいという情報を得ていたのだろう。

リンちゃんは高校生だが、そのユニークなブログで、ネットのユーザーに多くのファンがいる。

ブースの前に来た彼女を、さっそく取り囲んで、話しかける人、写真を撮る人。
騒ぎはますます、大きくなっている。


●人気者になったねえ…

「オーオー！相変わらず、人気ありますネー」
れおんさんは、その場を取り仕切るように、ブースの前に出てきた。
「ハイハイ、皆サン、チャオ！。あんまり騒がないでネ」

その様子を、なかば感心したようにルカさんは見つめた。
「へえ。人気者になったのね、リンちゃん。ついこの間まで、キディディランドでよく見かけた、常連の小さな女の子だったのに」

ニコニコ笑って、追っかけの男の子に写メを撮られたりしていたリンちゃん。
ふと、ルカさんと目が合って、「あ、」という表情になった。
「ルカさん、こんにちは」
「こんにちは、リンちゃん。お久しぶりね」

ルカさんはちょうど手に取っていた“リンリン・はっちゅーね”の入ったパッケージを、目の前に掲げた。
「素敵な商品ができたわよ」

リンちゃんはにっこり笑って言った。
「ほんとー。カワイイの作ってくれて、どうもありがとー！！」


●ヒヤッとしたなあ...

「ねえ、リンちゃん、それ持って、こっち向いてよ」
リンちゃんがルカさんからフィギュアを受け取り、眺めている様子を見て、男の子達が騒いだ。
「リンさん！こっちも」

またまた、ブースの手前で、ちょっとした“撮影会”が始まってしまった。

８，９人の熱心なファンが、スマホやデジカメで盛んに撮影。
ブースのお客さんや、歩いている人が、その様子を面白そうに見ている。

れおんさんは、それをニヤニヤしながら見ていたが、ふと「オヤ？」という顔になった。
「アレ、あの男の子、ドコカで見たこと、アリマスヨ？？」

盛んに撮影する輪の中にいる、一人の背の高い男の子。
帽子を目深にかぶり、Tシャツにスリムなジーンズの子だ。

れおんさんはしきりに、首をひねっていたが、結局、思い出せなかった。
「すごい騒ぎね」
ルカさんとともに、れおんさんは、撮影する人に「あ、そこの方、あんまり通路に出ないでネー」と、声を掛けはじめた。

シャッターボタンを押す輪の中で、帽子の中でニヤッとする男の子。
…いや、女の子。それは駿河ちゃんだった。

「ふぅ。さっきは、あのオッサンがこっちをジッと見てて、ヒヤッとしたなぁ」(・_・；)_