「大変大変たいへ~~~ん!」

ドタバタと大きな音を立てて木徒ちゃんが部屋に入…。

――ガラガラガッチャーーン!!

入り損ねた様だ…。盛大な音と共に平謝りする声が聞こえた。

「あぅ~~~痛い…。」
「大丈夫?」
「あ、スズミさん!大変なの!これこれ!これ見て!!」

木徒ちゃんは興奮気味に雑誌を目の前にずいっと突き出した。まず『持ち出し禁止』の文字が飛び込んで来てちょっと気になったが、見なかった事にして言われたページに視線を落とす。

『コンサート会場爆破予告!!【TABOO】の犯行声明!!』
 来月T都のセントラルホールで開演が予定されているコンサートに
 会場爆破予告のメールが届いた。
 警察当局は警戒を強めると共に悪戯の線でも捜査を進めるとの見解を発表』

「これってスズミさんの出るコンサートだよね?」
「うん…。」

恐怖が全身を冷たく覆った。勿論タダの嫌がらせによる悪戯の可能性だってあるんだけど、それでも怖い…。自分は勿論だけど会場には沢山の人が来るのに…!俯いたまま口を噤んでしまい木徒ちゃんが心配そうに覗き込んでいる。

「スズミ。」
「あ、奏先生!あのね、あのね、この雑誌…!」
「うん、その雑誌ならもう見たよ。」
「ねぇ、奏先生、大丈夫だよね?スズミさんのコンサート…。」

縋る思いで先生の方を見た。先生は何も言わずそっと頭を撫でてくれた。きっと私を
安心させようとしてくれたんだろうだけど、私はその手に何処かで張り詰めていた物がぷつりと切れてしまった。

「…先生…!」
「はわ…っ?!はわわわわわっ?!」

私は先生に抱きついていた。隣で木徒ちゃんがびっくりして真っ赤になって焦る声が聞こえて、だけど怖くて、向けられた悪意が悲しくてたまらなかった。

「ごめん、ちょっとだけ、その、外行っててくれるかな…?」
「はわわっ!わ、わかりましたぁっ!おじゃましましたぁ~~~!!」

入って来た時と同じ位大きな音で木徒ちゃんが外に飛び出した。木徒ちゃん、ゴメン…。心の中でいっぱい懺悔した。ダメだ、私凄く弱くなってる。先生に甘えたくて頼りたくてどんどん欲張りでワガママになって行く。

「よしよし、怖いな。よしよし。」
「先生…。」
「暫くこうしてるから…。」

先生は私を抱き締めたまま頭をそっと撫で続けている。猫をあやすみたいになでなでして、時々髪をサラサラと指で弄んで…。落ち着くのとは裏腹にドキドキは増して…。

「ねぇ、スズミ。」
「はい?」
「どうして羽鉦の匂いがするのかな?」
「え…?」

――心臓が止まるかと思った。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

BeastSyndrome -18.言い訳出来たら神認定-

マジで神だと思う

※次ページはネタバレ用の為今は見ない事をオススメします。

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投稿日:2010/05/30 23:32:36

文字数:1,086文字

カテゴリ:小説

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