22.全てのはじまり(後編)
天を覆い尽くさんばかりの巨大な一体のライジュウ。
月もその巨体で隠れてしまって見えない。
「おまえが最後だな。いよいよ本気だしてみよっかな」
間髪入れず、シンデレラが山のようにそびえ立つ巨大な獣に斬りかかる。
「うそ……」
今まで何千、何万とライジュウを倒して来た刀の斬撃が厚い毛皮に阻まれ、まったく通らない。
面喰っている一匹の人間を獣は、たかるハエをはたくかのように吹き飛ばした。
岩壁に叩きつけられたシンデレラはそのまま崩れた岩に飲み込まれてしまった。
山のように巨大な獣は、一人の少女に目標を定めて移動を始めた。
遠方からでもはっきりとわかる巨体が、さらにくっきりと確認できる距離まで近づいてくる。
しかし、少女は恐怖におびえることはない。少女の目はある一点を見つめていた。
「おい、どこ行くんだよ? つれないなー。今宵のダンスのパートナーは私だろ?」
獣の後方、少女の視線の先には赤い雷を放つ女性――。
シンデレラは左手で獣の毛をつかむと、ぐいっと自分の方へ引っ張った。
山のような巨体がまるでヘリウムガス入り風船のようにふわりと浮きあがる。
そのままシンデレラの後方へ投げ飛ばされてしまった。
シンデレラの体はいまだかつてないほどのすさまじい雷を放っている。
強烈な雷撃音に混じってわずかににジリジリという音が聞こえる。
一方、投げ飛ばされたライジュウはゆっくりと起き上がり、ふるふると首を振っている。
そして怒り狂ったように耳が張り裂けそうな声で叫び出す。
「なんだ、お腹がすいたのかい? それじゃ私が極上の料理をごちそうしてあげようか」
相手を喰ってかかったような口調は、いつものシンデレラの口調だ。
ライジュウは大きな口を開けて、怒りをあらわにしている。
次の瞬間、シンデレラは赤い一筋の矢になって巨大なライジュウの口の中へと突き刺さる。
……しばしの静寂。
そして静寂を切り裂くように、再び荒野に獣の叫び声が響き渡る。
だが、今度は声の様子がおかしい。まるで苦しみもだえるような叫び声が響く。
そして、ピタリと動きが止まり、獣の体に帯電していた雷がふっと消えた。
すると獣の体中から赤い雷が噴き出してきた。
巨大な赤い雷に包まれ、巨大な獣は蒸発したように消え去ってしまった。
「シンデレラ?」
事の始終をずっと臆することなく見続けていたクミは、空から落ちてくる赤い光を見つけた。
その落下予想地点にクミはたまらず駆けだす。
クミがたどり着くよりも早く光は地面に落下してしまった。
周囲には砂埃が立ち込めている。
クミがその場所に着くと、そこにはシンデレラが横たわっている。
彼女の体はまだ強烈な雷を発し続けている。
そんなこと気にもせず、クミは最愛の友に駆け寄る。
「シンデレラ シンデレラ シンデレラ」
目を閉じたままの友に懸命に名を呼び続けている。
「……あー、うるさいな。聞こえてるよ」
目を開き、弱々しい声ながらもしっかりとシンデレラが答えた。
友の声を聞き、クミは思わず笑顔になってしまう。
「へへ、何泣いてんだよ? 言ったろ? ヨユーだって」
笑いながら泣いているクミの顔を見て、シンデレラがからかう。
「何言ってんのさ? ヨユーにしてはボロボロじゃない?」
涙をすくい、シンデレラにお返しの言葉を返す。
二人は、お互いにくすくすと笑い合う。
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