窓のない部屋
痩せこけた叙事詩
サーカスを
燃やす人はもういない

僕らは
空を連れて歩く
指はさらさらと
崩れ落ちていく
何かが液状化した
夢もベッドから
流れ落ちている
床が空になったから
僕らは
空を連れて飛ぶ
心はにぎやかに
晴れ渡っている
鳥は遊ばないけど
楽しそうに笑う
風はまだ冷たいけど
季節の匂いを哺む
光が何層にもなって
街の隅まで浸していく
街はきらきらした記憶の中
それらは僕だ
綺麗な数式で
細くしなる体が動く
だけど今は
同じ街で
鮮やかにくすんだ色の食物
(延命処置に過ぎない類の)
ばかりを食べている
満たしているようで
涸らしているようで
街はきらきらした記憶の中
僕らは
空を連れて飛ぶ
どこにも行きたくなくなる
日を待っている
言葉で飾らずにも
美しい静寂を
ノートにたった一行
できるだけ単純な数式で
表されるような形を
簡単なことほど
巨きな力をもつものだよ
一日が破れている
雨は突然にやってくる
服を美しく引き裂くようにして
散らばるきらきらした記憶の欠片
それはそのままに硝子
それはそのままに星座
僕らは
空を連れて飛ぶ
やがて
美しい緑の丘にたどり着く
なだらかな曲線
木は一本も生えていない
風ばかり冷たい
そこにひとつ春の墓がある
僕はそこに埋まりたい

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

春の墓

閲覧数:501

投稿日:2021/04/09 23:16:38

文字数:554文字

カテゴリ:歌詞

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