「ねぇねぇ、その、“リンリンはっちゅーね”と組む、“月光企画”って、どういう所なの?」
レイムさんは、興味ありげに聞いた。

「最近、紙魚子さん、話の中でときどき、口に出すよね。その会社の名前」
レイムさんの問いに、紙魚子さんは答えた。
「うん。変わった会社でね。このごろ、またあそこが動き出したのかな、と思って。活発にね」

りりィさんも彼女に尋ねた。
「この間も、言ってましたよね。何でしたっけ、“ツクヨミ様”がどうこう、とか」

紙魚子さんは、笑って答える。
「そうなんですよ。変わった会社で、変わった方がいるみたいなの」


●謎の会社の後ろに...

「誰なの?その…“ツキヨミ”さんて」
レイムさんも目を見開いて聞く。
「うん、“ツクヨミ”さんね。私も詳しくは判らないんだけど…。偉い人らしいんだけど。というか、人なのかな?」

「え、人じゃないの?何?お化けか何か?」
レイムさんは無邪気そうに、妙なツッコミを入れる。

りりィさんも笑って言った。
「面白いわね。お化けが、偉い立場で勤めてる会社なのかしら?」

紙魚子さんは、首をかしげて言う。
「その、月光企画の社員の方と話してると、その“ツクヨミ”という人が後ろにいるのが、何となく分かるんだ」
「社長さんなの?その人」
「社長じゃないみたいね、もっと会長とか、名誉会長とか。とにかくあまり表に出てこないみたい」
レイムさんの問いに、彼女は答える。

「謎の会社の後ろに、いつもいるのね。なんだか闇夜の、お月様みたいね」
レイムさんは笑った。


●悪魔の会社だよ!

紙魚子さんは、笑って続けた。
「あそこが仕事にからむとね、まずたいてい、うまくいくのよ」
今度はりりィさんが首をかしげた。
「ふうん。じゃ、みんな仕事したがるでしょう?」

「それがね」
紙魚子さんは、眼鏡のフチを指で上げながら言った。
「商品が、ヒットするんですよ。すごく。そして、その後さっぱり、人気がなくなるの」
「え?」
レイムさんは驚いた。
「さっぱり?」

「うん。その後、ヒットが出なくなるの。それだけならいいんだけど、会社自体がなくなっちゃたり、社員が行方不明になっちゃったり、するんだって」
「ええ、その“月光企画”と組んだ、会社の人が?」

「そう。ヒットが出て喜んでいたはずの、その会社自体が、音信不通になったり、突然倒産して消えちゃったり」
「ええー」「まぁ」
りりィさんとレイムさんは、同時に声を上げた。

「なんなんだろうね、そこ。やっぱり、“悪魔の会社”って感じがするわ」
レイムさんは、怖い内容の言葉を、なぜか目を輝かせて言う。

「月光企画の社員の人たちは、いつもは普通の会社の人たちなんだけど...」
紙魚子さんは、ほおづえをついて考えるようにつぶやく。
「なーんか、怖い会社なんですよねぇ、雰囲気が」

りりィさんも、つぶやいた。
「うぅん。そういえば、この間、ゆくりさんも言ってたわ。テト・ドールを作られてるホソノさんが、そことは一緒に仕事をしたがらないって。そういう噂を知っていたのから、かな」??(・_・*)

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

玩具屋カイくんの販売日誌(238)  変わった会社

出版ではよく「ベストセラー倒産」なんて言われますけど、それとは違うみたいですね。

閲覧数:102

投稿日:2014/05/11 12:48:52

文字数:1,296文字

カテゴリ:小説

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  • enarin

    enarin

    ご意見・ご感想

    今晩は♪ 

    さて今回は月光企画のオカルトでは済まないお話ですね。大ヒットの後、対価として悲惨な末路を遂げる・・・・・怖!

    でも実際、今の”使い捨てコンテンツ”にされる芸人さん、俳優さん、声優さん、スタッフさん、アニメ、ゲーム、小説類、そもそもの開発会社、そんなものなのかもしれませんので、”リアルではそんなことないよ~”、ではないですね。

    昔の日本は”終身雇用”が雇用側にも働く側にも徹底されていて、”育ててやる”、っていう海外ではない習慣があったおかげで、雇用側も労働側も、やりがいと安心があったと思うんです。

    でも、雇用側は使い捨て文化、働く側はある程度覚えたら転職転職。これではある程度の成功は収められても、その後、続きませんよね…。

    今回はなんか暗い話で申し訳ありませんです。

    とりあえず、リンちゃんにしてもテトさんにしても、月光企画の魔の手にかからないことを祈るばかりです。

    ではでは~♪

    2015/03/15 20:03:11

    • tamaonion

      tamaonion

      enarinさん、感想を有難うございます!

      >でも実際、今の”使い捨てコンテンツ”にされる芸人さん、俳優さん、声優さん、スタッフさん、アニメ、ゲーム、小説類、そもそもの開発会社、そんなものなのかもしれませんので、”リアルではそんなことないよ?”、ではないですね。

      なるほど、そうですよね。最近は使い捨てコンテンツがホントに増えてるみたいですね。
      とにかく消費のスピードが速いから、制作側の対応も早くならざるを得ない。

      穿った見方かもしれませんが、デジタル社会のある種の弊害かもしれませんよね。


      >昔の日本は”終身雇用”が雇用側にも働く側にも徹底されていて、”育ててやる”、っていう海外ではない習慣があったおかげで、雇用側も労働側も、やりがいと安心があったと思うんです。

      ですね。昭和の日本は終身雇用がベースにあったし、経済成長が信じられていましたからね。
      でも、ふと思いましたが、江戸時代の日本では、とくに江戸とか町人は、皆「宵越しの金は持たない」とか言って、アルバイターのような暮らし方をするのも普通でしたからね。

      「安定」が恒常的でなくなってきた今の日本、なかなか明るい話も見えてきにくいですよねー。

      外から見ると安定してまとまっているように見えても、内からでしかわからない困難、というのもあるような気がします。

      また、ぜひ感想を聞かせてください!
      それでは、また。

      2015/03/22 22:17:30

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