少年は、目を覚ますと白い天井が目に入り込んできた。

「なんだこれは……?」

 少年は、ベッドに横になっていた。点滴がされ、重いギブスがつけられ。
 どうやらここは病院のようだった。
 少年が起き上がろうとして横を見ると、ピンク色の何かが見えた。どうやら、それは髪の毛のようで。

「う、うーん……」

 目を覚ましたのか、彼女は起き上がった。
 そして、起き上がった少年を見て、驚くように、急いで病室を去っていった。「先生! 神威が目を覚ましました!」との声と共に。
 少年は、神威がくぽという名前だった。



≪僕と彼女の不思議な日常 最終話≫



「やあやあ、神威くん。目を覚ましたと聞いて驚いたよ」

 そんな柔和な声で入ってきたのは、先生だった。とりあえず神威は先生を見て一礼する。

「何年ぶりだったか。家族とともに事故にあい、それから数年の間、君は眠っていたんだ。覚えているかね?」

 ――どういうことだ?
 神威は思考をフル回転させた。
 つまり『今までの世界』は全てウソ。
 ボクが造りあげた空想だというのか?

「――まあ、この感じなら大丈夫でしょう。明日にでも退院出来ますよ」
「そうですか。……ありがとうございます」

 ルカのその声を聞いて、医者は病室を後にした。

「――僕はほんとにこの世界へ戻れたのか」
「神威どうしたの? 急にそんなこと言ってー」
「い、いや……」
「ところで、今日解るー? 日付とか」
「――何日だい?」
「4月24日、火曜日よ。ところで、あなたはもう中三だから。とりあえず私と同じ高校にしといたから、それでいいよね?」
「相変わらず君は強引だな」

 神威はそこで、はじめて嘘をついた。
 ルカが“相変わらず強引”なんてこと、実際は知ることはないんだから。
 だって彼は数年もの間『ツマラナイ世界』で過ごしてきたのだから。

「……ま、さっさと体直してね。お医者さんも明日には退院出来るって言ってたし」
「……ああ」

 そんな言葉を交わして、ルカは病室を後にした。





 ――これは、そんな僕と彼女の不思議な日常の話だった。
 ――神威がくぽという人間と、初音ミクという人間。
 ――彼女はこの世界を『ツマラナイモノ』だといい、
 ――そして、神の地位をも手にしようとした。
 ――だが、それは神威によって阻止され、世界はリセットされた。
 ――世界の歪んでいた原因、ツマラナイモノな理由。
 ――それを知った今、彼はそんなものに無縁な生活を贈ろうとしている。






 そして、次の年の4月。桜舞い散るこの時期に、神威はとある高校の門をくぐっていた。
 彼の、新たな物語が幕を開ける――.





僕と彼女の不思議な日常

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

僕と彼女の不思議な日常 最終話

完結しました。今までありがとうございました。

連載:2011/10~2012/04

閲覧数:338

投稿日:2012/04/24 00:08:54

文字数:1,152文字

カテゴリ:小説

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