※「神様のグラニュール -Higgs boson and lonely stardust-」解説

ヒッグス粒子(Higgs boson)・・・「神の粒子」と呼ばれる、存在の確認されていなかった素粒子。この粒子の存在により、もともと質量のなかった他の粒子に抵抗が生まれ、質量が生じて今の宇宙の成立につながったと考えられる、画期的な大発見である。2012年8月の時点で99.999%の確率で存在すると認められている。
ここでは「タキオン」の「僕」に抵抗を掛け、光速以上の速度を減じさせたという設定になっている。

●これに関わる部分
Higgs boson that’s a glanure of God・・・「ヒッグス粒子は神の粒子」。タイトルの「神様のグラニュール(グラニュール=小粒)」も同じ意味である。

「いつしか壁にぶつかって」「見えない砂粒の海に閉じ込められた」「銀河のクモの巣」「捕われた闇夜の落とし穴(エアポケット)は」「神様の砂場」・・・すべてヒッグス粒子のこと。

「いくつもの粒が僕を取り囲んでく」「慌てて浮き上がろうとする僕をとどめる」「ヒカリさえも閉じ込め」「背中の翼が折れた」・・・ヒッグス粒子にぶつかり、質量のないものが質量を生じたことのたとえ。虚数の質量を持つはずのタキオン(=僕)をもとらえたことを示す。

「黒い宇宙(そら)の糸に冷めた身体を引っかけられて 落ちるはずのない加速が止まった」・・・タキオンの意義である「光速以下には落ちない速度」が落ちたこと。

「空虚だった僕の身体に再び生きている実感を灯した」「黒い粒たちに冷たい輝きを吸い取られて マイナスの質量がゼロに戻った」・・・これもタキオンの意義「虚数の質量」が無くなり、ゼロ、ひいてはプラスに転じたこと。

「質量は心のブレーキ 後に残した誰かを思う気持ちが 無限に早く飛べる力に鎖を掛ける」・・・ヒッグス粒子によって粒子に質量が生まれたことを示す。


●それ以外の部分
次元の違う宇宙・・・宇宙は初め9次元だったという説から。誕生当初の宇宙は6次元と3次元が合わさったものだったが、やがて6次元の宇宙の方は消え、我々のいる3次元の宇宙だけが残ったと言われる。「僕」は放浪の末、時を超えてその「違う宇宙」に迷い込んだということ。

チェロの音色、英雄(ドクター)・・・宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』初版に出てくるブルカニロ博士のこと。銀河鉄道の旅の途中で判断に迷うジョバンニに囁きかける。

夜明けの愛(ラブ)と喜び(ジョイ)の光・・・宇宙飛行士が実際に撮影した、夜明けの地球に降り注ぐ彗星の映像より。彗星の名前「ラブジョイ」と「愛(ラブ)」と「喜び(ジョイ)」をかけている。また、ラブジョイ彗星は太陽すれすれを通過して“生還”(消えずに残った)した彗星としても有名。奇跡的に帰ってくることのできた“僕”のことを示唆している。


●結末の意味
「僕」は結局、過去を遡って元いた地球に帰ることができた。これは「タキオン」が存在すれば、過去への通信が可能になるということから来ている。しかし実際は宇宙船からタキオンを使って通信しても、発した宇宙船自身は過去へ向かうことはできない。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

「神様のグラニュール」解説

「タキオン三部作」完結作、「神様のグラニュール」http://piapro.jp/t/2jsBの解説です。
タキオンとは異なり、こちらはもうほぼ存在することが確定したようですね。わーい∩(^∀^)∩
本格的な結論は今年の暮れだそうですが。

ヒッグス以外にもいろいろな宇宙関連ワードを詰め込みました。最後だけはあえて法則を破ってハッピーエンドに。本当に素晴らしいものはすぐそばにあったってことですね…。
このシリーズは本当に書いてて楽しかったです。宇宙っていいですね。

閲覧数:85

投稿日:2012/08/14 11:25:28

文字数:1,339文字

カテゴリ:その他

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