え…、リン、今なんて?
「どーしたの?レン。答えてよ。レンがお父さんを殺ったんでしょ?!レン?!!!」
―――レンがお父さんを殺ったんでしょ?
その言葉だけが頭の中で渦巻いて、消えない。
どうしよう、リンに…リンにばれて…!!
「やっぱり、レンだったんだね」
リンの高くて怖い声に現実に引き戻された。
「ちっ、ちがっっ…………………え――――」
…グサッ
鈍い痛みが、全身を襲った。驚きのあまり床に倒れ伏す。痛みの原因は左胸に刺さる…ナイフ。
そこから赤い液体が溢れ出していて。
「なっ…、はぁっ…!何でこんなぁっ?!!」
しゃべるだけで苦しく…。このナイフ、十字架つき…対悪魔用の武器か!ま…さか正体が知られてたなん…てっ!
「理由?そんなの……、復讐」
リンは冷たく言い放った。
意識がかすれてきて。
もう痛くないんだぁ、たぶん痛みを通り越してるんだよ、きっと。
もうすぐ楽になれるのかな…?
自分の弱音がささやく。
でもその前に、大好きなあなたに…。
家族を殺してごめん
あなたと過ごせた楽しい時間をありがとう
悲しいときに泣きあった思いやり
そして、
君にあって、初めて狂うほど人を愛した
言わなくちゃならないことがまだまだたくさんあるのに、
自分の意思とは別に体のすべてが拒むんだ。
ああ、そろそろ限界みたい。逝くよ。
…サヨナラ…
「安らかな顔…」
私はつぶやいた。そして、彼…レンの側にしゃがみこんだ。レンの手に小さく乗っている箱を拾い上げるために。
「ハッピーバースデー! リン♪」
「!」
箱に付いていた手紙にそう書いてあった。
そういえば今日、私の誕生日…覚えててくれたんだ…?
この言葉がとどめだった。抑えてた涙が猛烈な勢いで頬を伝っていく。
「なんだろう………え…」
小さな箱を開けると、純白の宝石が見えた。
―――リンは白がよく似合うよ
かつてのレンの言葉だ。
「白い宝石の指輪…」
レンのことを思えば思うほど、記憶という記憶が涙を止まらせない。
私は、祈るように手を絡ませ、つっかえまくる声で言った。
「れ…ひっく、ほ…ほんとっはっ……復讐じゃっ…なっい、ひく…の!
ただレンにっ…昔のことをズルズル引きず…ってるレンにっ、罪から解放されてほしかっただけなのっ」
どうやら落ち着いてきたらしい。
「お父さんから聞いたの…。
私のおじいさんと恋に落ちた魔界の悪魔の間に生まれたのがレンだって…。
禁をおかしたら、その血筋は絶える事無く、一生苦しみ続けるって…!その苦しみに終止符を打つには、鏡音家の最後の血筋の私が…
鏡音家の家宝の刃で、レンの心臓を貫くしか方法がなかった………」
それだけ言うと、レンがくれた指輪を、左手の薬指にはめた。
そして初めて…心の奥底から笑った。
…と、そのとき、
『あなたは、鏡音レンを夫として一生愛し続けることを誓いますか?』
「えっ…?!」
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「れっ、レン?!」
『どうなんですか?』
私はとびっきりの笑顔でいった。
「いいえ。
『永遠』
に愛し続けることを誓います」
そして、動かなくなったレンの胸元の刃を抜き取り、高く掲げた。
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そういって彼女は自分の心臓を目がけて、勢いよく刃を振り落とした。
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