何もない空間。この空間の色は、すべてを善へと誘う白なのか、それともすべてが闇に堕ちる黒なのか。

僕には分からない。



――それで、僕がここから出るには、どうしたらいいんだ?

『さぁ。あの神なら知ってるかもね』

――かも、じゃ困るよ。なんとかなんないの?

『…君は、「神のスゴロク」が、自分の人生をすべて管理していると、本当に思っているのかい?』

――どういうことだ。



神のスゴロクは、僕らが生まれたときから、僕らの人生の結末を知っていたはずだ。

その僕や初音の人生の結末は、今のこの状態ではないのか?



『「神のスゴロク」は、そのマスの上にあるコマ、つまり君達だ』

――うん。

『そのコマがゴールに着いた時、それは君達の‘死’を意味する』

――僕は、死んだのか?

『いや、死んではいない。神の言ったことを、思い出してみて』

――神の言ったこと?

『「このスゴロクさえあれば君らなんて世界の狭間に追放することだってできる」と言ったろう?』

――世界の狭間、だと?

『ああ。世界の狭間は何か、君はわかるか?』



世界の狭間。そんなもの、聞いたことがない。

でも、僕の思う世界の狭間は…



――この世と、‘あの世’の境目、か?

『正解だ。それで、君は死んではいないが、‘この世’には居ない。ということは?』

――僕は、神に‘世界の狭間’に追放されたのか?

『そうだ…ここが、世界の狭間だよ』



ようするに、僕は死んではいないが、生きてもいない、みたいなことか。



『そして、君達が消えたとき、神のスゴロクにある君達のコマも消えた。』

――でも僕は死んではいないから、まだゴールにはたどり着いてはいない、ってことか?

『そう。そして、君達のコマが止まったマスは、「消える」とのみ書いてあった。その先のマスは、何も書いていない』

――それで?

『マスに何も書かれていない、ということはそのマスからは誰にも縛られずに生きることが出来る』

――つまり、僕は自由なのか?

『そうだ。それと、神自身も、スゴロクに掛けることができる』

――?



どういうことだろう。「神のスゴロク」は、人間しか…?

神は、人間ではないから、「神のスゴロク」は…?



『あの‘神’は、元々は人間だ。そして彼女はまだ死んでいない』

――そういえば…

『彼女は神になったから、彼女のコマは消え、「神になる」というマスに止まった。その先のマスは、何も書かれてはいない』

――それで?

『その何も書かれていないマスに‘イベント’を書けば、コマは復活し、そのイベントが実行される。』

――まさか。

『自分のマスには何も書くことができないが、コマが残っていてマスに何も書かれていない者ならいい。 だから他の、まだ‘コマが残っている’ルカのスゴロクに‘イベント’を書けばいい。だからこの空間 から出るには、その‘神’であるルカのスゴロクを探し、そのマスに「初音と神威を世界の狭間から連 れ戻す」と書けば、君と初音は戻れる』

――そこに行くには、どうすればいいんだ?

『下に行ってみろ。』

――了解




僕は、はるか下の方角に飛び降りた。


しばらくすると、神と青い髪の男性が話をしているのが見えた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【リレー】僕と彼女の不思議な日常 9

閲覧数:557

投稿日:2011/10/21 21:58:06

文字数:1,380文字

カテゴリ:小説

クリップボードにコピーしました