鶯嬢(うぐいすじょう)


枯れた木々に蕾も芽吹いた折(おり)
とある童(わらべ)が生まれ落ちたとさ
その産声は大層美しく
人はその娘(こ)を「鶯」と呼んだ

「一度(ひとたび)その娘の 唄声を聴けば
どんな傷も癒えるぞ」と

唄え 心の赴く侭(まま)導く侭に
唯一無二 その声を響かせ
鶯色の世界に咲く桜のように
津々浦々へと移ろいでは消ゆる

蕾が育ち花に為り出す頃
とある男と出会いましたとさ
その眼は溢れるほど血を流して
娘は傍(そば)に寄り添い唄った

当然傷など 癒える筈(はず)もない
男はふと嘯(うそぶ)いた

「貴女の声は私の心に融(と)けるように
刻まれた痛みを消してくれる
真っ暗闇の世界に舞う揚羽(あげは)のように
美しいんだ」と 唄う娘に言う

その眼になる 共に生きる
決めた矢先 不治の病
彼を侵す 傍で歌い
涙零(こぼ)す 「この声なら…」

唄え 愛する彼に救いがありますように
世界は無情にも二人を離す
「貴女の声は私の眼であり希望だった」
それを言い残し彼は旅立つ

叫ぶ 心の赴く侭導く侭に
「彼一人救う事も出来ない」
鶯色の世界で桜が散るように
娘は囁く「貴方が好きでした」 

「またね」




「声が美しい娘の唄」



解釈的な↓

名も無き時代に生まれた一人の女性。
生まれ持つ美貌もさることながら
その声は唯一無二の美声と称えられ、
人々はそんな彼女を「鶯」と呼んだ。
一度その声を聴けば、どんな難病も
忽ちに治り、傷をも癒すと言われ、
津々浦々からの人気の的となり各地を旅した。
そんな折、彼女はとある男と出会う。
男は眼から血を流していた。
驚いた彼女は、男の横で唄を唄った。
勿論傷は癒えることはなかった。
しかし男は、「ありがとう。貴女の声は
私の心の傷を癒してくれました」
と彼女に言った。彼女は、
「私がこの人の傍にいる事で
彼の目の代わりに為れればいい」と考え、
彼と共に過ごしていくことを決めた。
そして、彼と過ごしてしばらくが過ぎた頃。
彼はその時代の流行病に侵されてしまう。
それは不治の病と言われ、どんな
治療法も存在しないとされていた病気だった。
彼女は、ただただ、泣きながらその美しい声で
彼の傍で歌い続けた。「私の声は
どんなものでも治すんだ」と。
しかし、彼の病状は日を追うごとに悪化し、
遂に最期の日を迎える事となった。
彼は「貴女の声は私の眼になってくれた。
それだけで、ただそれだけで十分だ」
と言って息を引き取った。彼女は、
「何がどんな難病も忽ち治る…だ!
彼一人救えやしない!」と叫んだ。
泣き叫んだ。喚いた。その声は枯れてもなお
美しかった。そして最後に彼女は
その美しい声で「貴方が好きでした またね」
と囁いた。


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

鶯嬢

http://piapro.jp/t/C2Od
上記URLの曲への応募用の詞。

閲覧数:200

投稿日:2013/03/18 02:47:37

文字数:1,160文字

カテゴリ:歌詞

オススメ作品

クリップボードにコピーしました