「ここ、お料理がいつもおいしいですのね。わたくし、時々利用してます」
「オゥ、そうだったんデスカ。アリガトウゴザイマス。うちのシェフのソラさんは、ウデは確かなんですヨ」

オサカモトさんの言葉に、れおんさんは笑いかける。

れおんさんのいる会社、ハミングスの1階にあるカフェ・レストラン「カフェ・ドナ」。
人気の新製品“リンリン・はっちゅーね”の打ち合わせで、彼と話してるのは、月光企画の女性プロデューサーの、オサカモト ミウさんだ。

「いま、あの“ガチャ”の“はっちゅーね”が人気になってるそうで、よかったです」
微笑む彼女に、れおんさんはうなずいた。
「エエ、ホントに! 月光企画さんと組ませてもらって、ヤッパリ、良かったデス」

「そうですね。商品のファン層を、オタクさんたちに絞るのが良いでしょうね。オタクのパワーは、すごいから」
オサカモトさんは、白い上着の腕を組む。女医さんの着るような上着の服だ。


●売上につながります

それを聞いて、れおんさんは笑顔をやめた。
「ウーン、でもそれだけっていうもの、ドウデショウ。たしかに、マニアの男の子達は、よく商品を買ってくれる購買層ですけど…」

彼は首をかしげて考え込む。
「うちの商品は、もともと生活雑貨がメインなんデス。あんまり女性とかけ離れたものが増えても、ドウカナ~」

彼女はそれを聞くと、静かに微笑んで言った。
「そんなことないでしょう。アンダーグラウンドの層の心をとらえることは、売上につながります」
そういうと、彼女は1枚の企画書を取り出して、机の上に置いた。
「これが次の“リンリン・はっちゅーね”の企画です。アニメ化なんです」

れおんさんは、目を丸くしてそれを覗き込んだ。彼女は続けた。
「カジテレビの、深夜の『ミテミナ』枠を考えてます」


●あなたたちの会社だけに?

れおんさんは、思わずフーッと息を吐いた。
「スゴイデスネー。なんだか、次々と新しい企画が、出て来ますネー」

彼女は、笑ってうなずいた。
「そうです。こういうのは、たたみかけるように続ける方が効果的です。リンちゃんもキャラクター化して、登場させたいんです。もう、彼女に話もしてあります」

れおんさんは、ふっと真顔になった。
「リンちゃんと?話を?いつですか」

彼は、このところ“リンリン・はっちゅーね”の事で、リンちゃんと話そうとして、何度も連絡を取っていたのだ。
でもほとんど、その行方がつかめないのだ。

「彼女はいま、私たちと一緒に行動してます」
彼女はキリリと言い放つ。

「彼女とのコンタクトは、私たちに任せてください。大きなブームを作ってみせますから」
「でも、ワタシたちも、リンちゃんと話したいのデスケド…」
「大丈夫です。私たちがいれば」
あまり詳しいことは聞けないような雰囲気を感じて、れおんさんは黙ってしまった。

その時。れおんさんとオサカモトさんがいるテーブルの横から、声がした。
「それも、どうかと思いますね」

2人は驚いて、顔を上げた。それはミクさんだった。

「アー、ミクさん。いらっしゃい、お待ちしてました」
れおんさんは、にっこりと笑った。

ミクさんは、言った。
「あなたたちの会社だけに、企画をまかせるのは、いいことではないですね」((-_-。)

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

玩具屋カイくんの販売日誌(241) リンちゃんは私たちが!

はっちゅーねの生みの親、ミクさんが来ました。

閲覧数:86

投稿日:2014/06/25 21:05:57

文字数:1,374文字

カテゴリ:小説

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  • enarin

    enarin

    ご意見・ご感想

    今晩は。続き、拝読させて頂きました。

    月光企画のPさんは、オサカモト・ミゥさん・・・・あれ?

    えっと、ネタ元から言うと、ミゥさんは教授の娘で、確か、男性の方のオサカモトさんは、月光企画は?なんだけど…、と。

    うーむ、ミクさんも絡んで、これは一波乱ありそうですね。

    あと、ボカロは一義的に決められる作品にしないように、リアルではアニメ化企画は全て断ってんですよね。動画でのアニメやアニメっぽいのはOKでも、TVでの”ボーカロイド The Animation”とかはNGにしたとか。全盛期、作りたい企業は沢山あったとか…。

    ではでは~♪

    2015/05/15 20:43:05

    • tamaonion

      tamaonion

      enarinさん、メッセージを有難うございます!

      >月光企画のPさんは、オサカモト・ミゥさん・・・・あれ?
      >えっと、ネタ元から言うと、ミゥさんは教授の娘で、確か、男性の方のオサカモトさんは、月光企画は?なんだけど…、と。

      書き方が統一してなくって、スミマセン<(_ _)>

      たしかにネタ元から言うと、美雨さんは教授の娘ですネ。
      でも、この話では教授は出てないんです。オサカモトさんという女性の社長(兼プロデューサー)が一人いるだけです。

      オサカモト・ミウさん(つまりイメージ元は、ボーカロイドのMEWですネ)の、キャラクターの書き方が下手でした。ゴメンナサイ。


      >男性の方のオサカモトさんは、月光企画は?

      そうか、ホソノさんという男性も、お話に出てるので、読み手の方を混乱させてしまうかもですネ。

      ネタというか構成をばらすと、

      ●「月光企画」の代表は ツクヨミ という 謎の存在です。会長なのか、名誉会長なのか、はたまた存在しないのか。

      ●いちおう、社長的な実質上の、実働権力者は、オサカモト・ミウさんという女性です。自ら現場に出ています。

      ●ほかに、ベニスズメ という 女性の謎の社員がいます。

      このへん、上手く描けてなかったみたいで、私の筆力不足です<(_ _)>
      指摘してくれて、ありがとうございました。

      うん、元ネタの性別とか、イメージも尊重しないといけませんね。反省です。


      >TVでの”ボーカロイド The Animation”とかはNGにしたとか

      そういう企画があったのですか。
      今後、どういう形かで、ボカロがまた大活躍する時には...
      TVではない、別のプラットフォームのアニメで、見てみたいですよね。

      また、感想を聞かせてくださいね。
      それでは、また。

      2015/05/16 23:56:47

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