ざわつく空港で搭乗手続きを済ませ、芽結と長椅子に座った。
「はぁー、結構面倒臭いんだな。」
「海外だと特に長いよね。1時間位あるけどどうする?本でも買おうか?」
「だな、寝るにしても限度があるし…じゃあさっきの本屋行くか。」
「あ、私ちょっとお手洗い…先に行ってて。」
芽結が少し恥らいながら歩いて行った。行き違いになるかも知れないし、ここで待ってるか…そんなに時間掛からないだろうし。
「あぁ、やっと見付けた。流船。」
「え?」
不意に目の前に影が差した。顔を上げると見覚えのある真っ赤な髪と緑の瞳があった。
「クロア?何?見送りに?」
「ちょっと来て、こっち。」
「え?お、おい?!今芽結が…クロア?」
クロアは腕を掴むと半ば強引に俺を引っ張って歩いて行く。どうしたんだ?見送りにしては様子が違う様な…?と、引っ張られるまま歩いた先に芽結を連れた鈴々の姿があった。向こうも同じ状況なのか芽結がキョトンとしていた。
「あ!クロア!流船君!こっちこっち!」
「どう言う事?」
「いや、俺もよく解らなくて…。」
「二人共お疲れさん。」
「え…幾徒?」
「仕事で来れないんじゃ…?」
来れないと聞いていた幾徒を前に益々頭に『?』が浮かんでいた時、突然警報機が鳴り響いた。辺りに悲鳴と緊張が走る。振り返ると滑走路に煙が充満していた。しかも燃えているのは…。
「あれって…私達が乗る筈だった便じゃ…?」
「マジで…?」
呆然と外の騒ぎを見ていると、電源を切り忘れていた携帯が鳴った。放心状態で電話に出る。
「…流船?!おい、無事か?!今旅客機が空港で炎上したって速報が…!」
「あれ…幾徒…?」
「無事なんだな?!良かったー…!」
俺は電話を持ったまま真っ直ぐに前を見た。いつの間にか居なくなっていた二人の立っていた場所と、いつもと同じ不敵な笑みを浮かべる目の前の幾徒を。
「これで…MissionComplete…なーんてな?」
そう言って笑うと、目の前の幾徒は煙の様に消えた。
「もしもーし?流船?芽結?おーい?どうした?」
「なぁ、幾徒…一回だけ言うから聞いてくれる?」
「ん?何だ?」
「…ありがとうと…それから馬鹿野郎。」
「は?!ちょ…?!おいどう言う意味だよ?!流船?!おーい?!」
「取り敢えずそっち行くから。」
「うん、そうだね。」
「え?あー解った、気を付けてな。」
電話を切って思いっ切り伸びをして、それから隣の芽結と手を繋いだ。もう二度と離さないと誓った手を。
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お疲れ様でした!ヽ(●´∀`●)ノ
今回は独自のSF(?)要素があって面白かったです。
ルフナ君可愛い顔してなかなかの肉食系…+(  ̄ー ̄)b
毎回まったく違うジャンルの話なので次回作もたのしみにしてます!ふひひ!
2011/06/22 18:06:56
安酉鵺
おおぅ…まだ読んでくれていたか!ありがとう!!マジでありがとう!!w(ソコカヨ
2011/06/22 18:25:20