その頃、雅彦は大学の自分の部屋にいた。考えていたのは沢口のことである。最近雅彦は何もしない時は沢口のことばかり考えていた。
(全く、仕事中にこんなことを考えるとは、僕は教授失格だな)
そう考える雅彦。たびたび雅彦は沢口を見舞っているが、見舞うたびに沢口が弱っていくのを目の当たりにしている。最後が近いのは、もう誰の目にも明らかである。雅彦もそのことは十分に分かっていた。しかし、心の中ではそれを認めたくないという思いもあった。しかし、雅彦が認めなくても、現実が変わる訳ではない。
(僕はその時が来たら、耐えられるだろうか?)
もう何度も考えたことを再び考える雅彦。そのことをふくめた沢口に関することを色々と考えているせいで、常時精神的な負荷が増大している状態だったが、雅彦に考えることを止めることはできなかった。そうすることが自分を追い詰めることにつながることも雅彦も分かっていた。考えを変えるため、とりあえず、コーヒーを淹れて気分転換することにした。立ち上がって電気ケトルに水を入れる。水がわくまでぼーっと待つ雅彦。そうしてわいたお湯でコーヒーを淹れる。淹れたコーヒーを持って席に戻った。そうして再び考える。
(今、僕に何ができるかな?)
何とか考えを変えることができた雅彦。だからといってすぐに考えがまとまる訳ではない。何をするべきだろうか?自分に何ができるか、そんなことを考える。すると、一つの考えが浮かんできた。
(とりあえず、これをやってみよう)
そう考えてコーヒーを口にする雅彦。口にする頃には、コーヒーはすっかりさめていた。そのさめたコーヒーを全て飲み終えると、雅彦は自分の部屋を出て、研究室に向かった。研究室にいた長瀬と佐藤に声をかける。
「安田教授、どのようなご用件でしょうか?」
「ああ、ちょっと奥の打ち合わせスペースに来てくれないか?」
「分かりました」
そういった雅彦を先頭に、奥の打ち合わせスペースへ向かう三人。打ち合わせスペースに着くと、長瀬と佐藤に座るようにうながす。二人は席につくが、雅彦は立ったままである。
「以前のことだが、少し前に、君たちが僕の部屋にわざわざ来てくれてたことがあっただろう。あの時は、君たちの厚意をむげにするようなことをしてしまって、本当にすまなかった」
そういって頭を下げる雅彦。最初、二人はなぜ雅彦が頭を下げたのか分からなかったが、しばらくして理解した。
「そんな…、安田教授、我々が出すぎたことをしただけです。ですので、頭をあげてください」
佐藤はそういったが、雅彦はしばらく頭をあげなかった。しばらくすると、頭をようやくあげ、打ち合わせ机に備え付けの席に着く。
「確かに君たちの予想したことは正しい。沢口さんは最初は検査入院ということで入院されたが、それが長引いているのだ」
「やはりそうでしたか…、安田教授、その件についてご自身から沢口さんに何か聞かれましたか?」
「いや、怖くて聞けないんだ。情けないだろう」
自虐的にいう雅彦。
「こんな僕が教授をやっているんだ、全く、こっけいにもほどがある」
さらに自虐的な言葉が続く。
「世間がミクの恋人である僕がこんな情けない男であるとしったら、世間は僕を嘲笑…」
「…安田教授、止めてください!」
長瀬が叫ぶ。その勢いに、口を止める雅彦。
「安田教授、そんなに自虐的にならないでください。教授が自虐的になられたら、その下で学んでいる私たちの立場はどうなるんです!」
雅彦を叱責する長瀬。その言葉を、うつむいたまま黙って聞く雅彦。
「…そうだな、すまなかった」
「安田教授、気を確かに持ってください」
「そうだな。…ありがとう」
そういって頭を上げる雅彦だった。
「とりあえず、気分を変えるために他の所にいって気分転換しましょう。大学のカフェはどうです?」
「カフェか…、悪くないかもしれないな」
「それなら決まりです。早速いきましょう」
そういって、部屋を出る三人だった。
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4/4 BPM133
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正面あたりで待ってるわ
ええ、楽しみよ
あなたの声が聞けるなんて
背、伸びてるね
知らないリングがお似合いね
ええ、感情論者の
言葉はすっかり意味ないもんね...ゼロトーキング(Lyrics)
はるまきごはん
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