<第15話末文より>
ミキ:ど、どういうことですか!? 私にはさっぱり…
ルカ:これからお話しします
<Dear My Friends! ルカの受難 第16話 ルカのナミダ>
(アフス城内・魔導研究棟 新規兵士造成室)
イロハ:ルカさんの話の前に言っておくが、私が“ルカさんに試合を見て欲しい“と言ったのは、悪意があったからではない。来賓扱いにしていたにも関わらず、こんな生臭い所に兵士付きで幽閉されているのを気の毒に思ったからだ。同時に、来賓扱いに戻して、特別室に戻って貰うと、自分のご友人であるミクさんの試合を、一度も見ずに、結果だけ突き付けられて、あーしろこーしろと言われるのも、ナンだと思ったので、特別観覧席に来て貰って、自分の目で確認してもらおうと思ったからだ
ミキ:普通の人だったら、それは、“余計なお世話だ、特別室で待たせてもらう”、と断ってしまう事も、ちゃんと考えての事だな?
イロハ:無論だ。せめてこの部屋からは出そうと思った。しかし、ルカさんの返答は、“ミクさんに言葉を伝えられる設備のある場所で、見ていたい”、だったので、こっちがびっくりしたのだ
ミキ:そこから、ルカさんのお話が始まるわけだ
ルカ:はい。追加説明、ありがとうございます
イロハ:うむ
***
ルカ:まず、ミキさんが言っているように、“ミクを更なる受難に突き落とすような行動”、だと考える事もできます。ミクにとって目の前に自分の友人の姿をした敵がいて、更に、届かない所で本物が見ている等と言うことは
ミキ:いや、それが普通なんです。物語なんかでもよくあるでしょ? 主人公は悪い王のたくらみで戦う事を強いられてしまう。更に王は主人公を精神的に追いつめるために、よく見える所に、友人を連れてきて、「ほら、よく見ろ! お前の友人だぞ! ガッハッハッ!」ってなセリフを吐く。そんなシーンが
イロハ:私はそんな悪い王ではないぞ?
ルカ:そうですね、“その条件”、なら友人も来たくないというだろうから、“王が無理矢理連れてくる”、という選択1つになりますね
ミキ:!?!? それがわかっていて、なんで!?
ルカ:答えは1つ。ミクの相手が『私の姿をしたコピー品』だからです
ミキ:え!? だって、それは私が話した内容より、更に“友人が来たくなくなる”動機になりませんか!?
ルカ:あなたは優しいんですね
ミキ:!?
ルカ:情に脆く、義理人情が行動理念を支配している、そんな戦士
ミキ:こんな“非人道的カード”を見せつけられたら、情に脆くなくても、危険を冒してまで行動に移します!
ルカ:…私はミクやその仲間に冷たいですか?
ミキ:今の段階の説明では、そう思わざるをえないです。ミクさんが見える所に自分が行く理由が“友人が自分のコピー品と戦うから”なんて…
ルカ:…“他の屈強な戦士”が相手だったら、私は行かなかったと思います。ミクを信じて、特別室で待ってます。強引に連れてこられたら、諦めますが
ミキ:それは普通でしょう
ルカ:でも、ミクの相手は、『私ではない、私の姿をしたコピー品であり、偽物』、なんです。そしてユキ達は、それを隠さず、コピー品も自分で正体を明かしてます
ミキ:おそらく、ユキ達は、“ルカさん本人を改造する事はもったいないと判断したんでしょう。それに、コピー品を”本物だぞ“なんて言い張ったって、貴方を良く知るミクさんは、絶対信じないでしょう
ルカ:私の真意に近づいてきましたね
ミキ:!?
ルカ:そう、相手は“姿は同じでもルカではない『ナニカ』”なんです。そしてそれは隠されずに“カミングアウト”されました。私の理由があったとしても、その時点で、ユキ達は“失策”しているんです
ミキ:な…
ルカ:そして、“本物の私”が、ミクに言葉をかけられミクからも見ることが出来る場所に、皇帝さんによって守られながら現れたら、ミクはどう思います?
ミキ:そ、そりゃ、『困惑』するでしょう。どっちが本物なのか・・・・・・・あ!
ルカ:そう、偽物であり敵意を示している事をカミングアウトしている相手と、的確な助言を与える明らかに本物である私を、混同することはないでしょ? 私を見ることが出来なかったら、『その差』、は結局ミクの心中でも曖昧になってしまって、どうやっても相手への一撃をためらうでしょう。「カミングアウトは嘘で、こいつは実は洗脳された本当なのでは?」などのいらぬ雑念が沸いてきて、戦闘にならないはずです
ミキ:それが、『ミクさんへの追い風』、ってわけですね。確かに、私ではとても思いつかない策だと思います。更にユキ達の策を“失策”と斬り捨ててしまう、その思い切り、さすがと言わざるをえないです
イロハ:私も感心してしまったよ。だから、コピー品を作る事を許してしまった事への罪滅ぼしに、私専用でロックがかけられる、マイク常設の特別観覧室に招くことにしたのだ。滅多に使うことはないのだが、用意して置いて本当に良かった
ミキ:ですが、ルカさん、その“策”には1つ、“大前提”、があるのは知ってますよね?
ルカ:ええ、“はっきり違いが解っていても、ミクが私の姿をした相手への攻撃をためらわない”事ですよね?
ミキ:ユキ達の策は、その“大きな利点”を利用した物だ。人間より動物の方が、狩りの時“姿形を見て攻撃を判断する”、という性質がある。勿論、臭いや他の要因で確認する動物もいるが、おおかたは“姿”で決める。“あなたの姿をした相手”に、ミクさんは、致命傷の一撃を与えることが出来ると思いますか? 人間の“情に流される”事を抜きにしても、『本能的』に攻撃の手を止めてしまうのでは?
ぽろ・・・・・・ぽろ・・・・・・
それは信じられない光景だった。あの冷静沈着で淡々と喋っていたルカの頬を、『涙』、がこぼれたのだった。そして、下唇をギュッと噛んだ後、少し、“人間らしい口調”、で、鼻声気味で“喋り”だしたのだった。
ルカ:・・・・私だって・・・・人間なのよ・・・・
ミキ:ルカさん・・・・・
ルカ:必勝の策のために、大親友に“冷徹になれ”、“感情に流されるな、”私の姿に騙されるな“、なんて『一方的なこと』を期待するなんて、受難続きのミクに上から目線で、『本心』から言っていると思う?
ルカの話し方が明らかに変わった。『淡々と策を伝える話し方』から『感情を持った人間』の話し方になったのだ。
ルカ:これまでの私の話から、私が“受難を受けている“事を自覚してないって思った? あんなの”本当の本心“であるはずないでしょ!? ”策の真意”かも知れないけど、私の心からの声じゃないのよ。策のために精一杯強がっているだけ。私だって“人間の女の子”なの。生き残るために“冷徹無比な軍師”を演じているだけ…
ミキ:ルカさん・・・・我慢していたんだ・・・・
ルカ:私の世界に、『泣いて馬謖(ばしょく)を斬る』って言葉があるの。馬謖って兵が軍師の命令を無視して、独断行動をして、その策が失敗しちゃったの。軍師はその兵を大切に思っていたから許したかったけど、それでは他の兵に示しが付かない、だから、泣きながら馬謖を斬ることを命じたの
イロハ:その気持ち、何となくわかるぞ
ルカ:その意味合いからはちょっとずれるけど、今の私が策のためにミクに期待している事って、そんな感じなのよ。本当にあなた達の前でワンワン泣き出したいの。今もちょっと泣いてるけど、ソレくらい、私だって辛いのよ。簡単にはできっこない事、出来なかったらミクが殺されること、私の策でミクがコピーに攻撃出来たとしても、とても倒すなんて出来ないこと。全てユキ達が“突破できないだろ?”ってドヤ顔で言ってきそうな“ミクに対する策”
ミキ:・・・・・・
ルカ:だからこそ、私は“自分にもミクにも、とんでもない受難が降りかかる事”を知りつつ、我慢して必至に策を講じたのよ。この策が成功しなかったら、全員、No Future、なのよ
ルカの涙は止まっていた。とりあえず一呼吸おき、涙を拭いて、ニコッと笑顔を見せた。
ルカ:…うん! スッキリしちゃった! これまで溜まっていたからね。大丈夫! ミクの前ではあんな顔見せないから。だから、今のこの事、みんなには黙っていてね。ユキ達に知られると舐められるから♪
ミキ:ふ・・ふふふ、OK! 貴方のナミダは、この時限り! これからは、元の“天才軍師”に戻って、ビシバシ、ミクさん達を勝利に導いて行ってね!
イロハ:ミキ、ルカさん、君たちとは良いお酒が飲めそうだな。時間がとれたら、一杯、つき合って欲しいところだ
ルカ:時間と機会があったら、ご一緒させて下さい
ミキ:私もつき合いたいですよ
ミク達の勝利の鍵を握る人物に入るであろう“この3人”も、テル達と同様に意気投合したのでした。ミクにルカ、この二人には、何か、人を引きつけまとめる力が備わっているようだった。
(続く)
CAST
ルカ姫、巡音ルカ(ルカ):巡音ルカ
初音ミク(ミク):初音ミク
<クリプトン(Cripton)王国サイド>
魔導師アペンド:初音ミクAppend
僧侶リン(リン):鏡音リン
勇者レン(レン):鏡音レン
<インタネ(Interne)共和国サイド>
異国の剣士 神威学歩:神威がくぽ
<アフス(A-Hu-Su)帝国サイド>
魔導師テル:氷山キヨテル
皇帝イロハ:猫村いろは
神官ユキ:歌愛ユキ
クグツロボット(コードネーム)“ミキ”の外観:miki
(ミキの中身=ミリアム:Miliam)
ルカコピー:巡音ルカ
<フォーリナー(Foriner)軍政国家サイド>
変身兵士 ソニカ:SONiKA
皇帝アル:Big-AL
重機動兵器アン:Sweet Ann
剣士レオン:Leon
圧殺兵士ローラ:Lola
導士オリバー:Oliver
拳闘士シユ:SeeU
その他:エキストラの皆さん
***
<バトルアリーナの対戦カードまとめ>
第1回戦 : ×ソニカ vs ○拳闘士シユ
第2回戦 : ×レン vs ○圧殺兵士ローラ
第3回戦 : ○学歩 vs ×剣士レオン
第4回戦 : △アペンド vs △重機動兵器アン
最終戦 : ○テル vs ×ミキ(ミリアム)
EX最終戦 : ミク vs ルカコピー
回復担当 : リン & 導士オリバー (非戦闘員)
Dear My Friends! ルカの受難 第16話 ルカのナミダ
☆オリジナル作品第15弾である、「Dear My Friends! ルカの受難」の第16話です。
☆今回はルカさんの“策”と、意外な一面のシーンです。
☆感情のこもったシーンだったので、作者も感情こもりました。
☆文字数少な目ですが、区切りが良いので、ここで切りました。
*****
hata_hata様が、第1作目のきのこ研究所のイメージイラストを描いて下さいました!。まことに有り難う御座います!。
『「却下します!」』:http://piapro.jp/content/oqe6g94mutfez8ct
☆hata_hata様が、第2作目のきのこ商店街のイメージイラストを描いて下さいました!。本当に有り難う御座います!。
『causality』:http://piapro.jp/content/c0ylmw2ir06mbhc5
☆nonta様も、同じく商店街のイメージイラストを描いて下さいました!。本当に有り難う御座います!。
『ようこそ!、きのこ駅前商店街へ!』:http://piapro.jp/content/dmwg3okh7vq1j8i1
☆あず×ゆず様が、第8作目の部室棟の死神案内娘“テト”を描いて下さいました!。本当に有り難うございます!。
『おいでませ!木之子大学・部室棟へ♪』:http://piapro.jp/content/rsmdr1c3rflgw7hf
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おむおむ
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ご意見・ご感想
オレアリア
ご意見・ご感想
enarinさん今晩は!
おお!昨日に続いて気になっていた16話がうpされてとても嬉しいです!
今回はいよいよミキが理解できなかったルカの真意が明らかになりましたね。僕もこの回を見るまで彼女の心中が分からなかったのですが、ここまで考えていたなんて…
特に文中の「泣いて馬謖を切る」と「私だって人間なのよ…」というのがとても印象に残りました。
気がつけばルカ、ミキ、イロハ皇帝の3人も親しい仲のように打ち解けていましたね。
流石enarinさん、大いに感情の込められたこの回は本当に素晴らしいです!
それなのにどうして注目の作品に入られないのが残念でなりません…
次回はEX最終戦編の中心に入りそうな予感ですね。17話も楽しみにしております!!
2012/05/16 19:26:14
enarin
オセロット様、今晩は!
> うpされてとても嬉しいです!
有り難うございます! ブレイクスルーした後の”14話?16話”は、ある意味1つだったのかも知れません。ストーリーがわき出してきて、結構早く書けました。
> 僕もこの回を見るまで彼女の心中が分からなかったのですが、ここまで考えていたなんて…
ルカさんも、冷静な顔と話を作って、必至でなんとかしようと考えていたんですね。ちょっと直情的な面もあるミクとは違って、知的な彼女です。
> 特に文中の「泣いて馬謖を切る」と「私だって人間なのよ…」というのがとても印象に残りました
実は馬謖については、ちょっと書き足す部分もあった感じがしました。
「泣いて馬謖を切る」→ルカさんが策のためや何かの理由で、泣きながらでも、ミクさんに冷たく当たらなければならないときもある
> 気がつけばルカ、ミキ、イロハ皇帝の3人も親しい仲のように打ち解けていましたね
敵の将、敵の兵士なのに、ルカさんは後込みしませんでした。更に、うち解けて協力体制まで作りました。これはルカさんならではの”力”なのでしょう。”酒を酌み交わす”って、相当仲が良くならないとできませんからね。
> 大いに感情の込められたこの回は本当に素晴らしいです!
本当に有り難うございます!!! とっても嬉しいです! 私も今回は書いていて感情こもりました!
> それなのにどうして注目の作品に入られないのが残念でなりません…
あ、これは右上のブクマで繋がったテキストの数や、トータルブクマ数で決まるようです。ちょっとシステムが複雑らしくて、私もよくわからないんです。過去作や目次作品では、結構、注目作に入った事もあるんですが、私の作品は傾向的に、最新作は入らないようなんです。
> 次回はEX最終戦編の中心に入りそうな予感ですね。17話も楽しみにしております!!
はい! 次回はルカパートからミクパートに変わって、バトルへ入っていきます。まずは準備ですけどね。さて、テル達の”助力”はどういうものなのでしょうか?
このたびのご閲読、コメント、ブクマ、本当に有り難うございます!!!
2012/05/16 21:51:11
clown
ご意見・ご感想
こんにちは…! enarin様!
まだまだ続くと聞き、とても安心しました!
ルカさんはそんな事を考えていたのですか…。さすがですね…。
親友の絆は強いと聞きます。きっと、ルカさんがミクさんにそう思えるのも、二人の絆の強さなのでしょう…。だからこそ、親友の姿をしたルカさんと戦いたくないのだろうと思いましたが…。
そしてルカさんの本音…。泣きそうになっちゃいました。良い仲ですね…。
また二人が元の世界に帰れますように…。
今回も感動するような作品、どうも有り難うございます。
次回もお待ちしておりますね♪
2012/05/16 17:40:44
enarin
clown様、今晩は!
> まだまだ続くと聞き、とても安心しました!
はい、まだ書くべき内容が結構ありますし、1話の文字数を少なくしてまとめているので、まだまだ続きますよ?♪
> ルカさんはそんな事を考えていたのですか…。さすがですね…
アフスでもフォーリナーでも関係者が全員欲しがるわけです。でもルカさんが策を立てているのは、大親友のピンチであると同時に、二人共の生還を目標にしているからですね。ミクさんバトル役、ルカさん戦略役です。
> 親友の絆は強いと聞きます。きっと、ルカさんがミクさんにそう思えるのも、二人の絆の強さなのでしょう
はい。ミクのルカへの信頼も、ルカのミクへの思いも、全て切ることが出来ない”固い絆”があるからです。ミクさんが自分の意志でこの世界にやってきてルカを救おうと必至になっていると同時に、ルカさんも必至で考えていたんですね。
> 親友の姿をしたルカさんと戦いたくないのだろうと思いましたが…
ミクさんの心境は今でもそうですね。絶対戦いたく無いはずです。でもそれでは自分がやられるし、ルカと一緒に生還もできない。だからミクさんも、必至で頑張っているのだと思います。
> そしてルカさんの本音…。泣きそうになっちゃいました。良い仲ですね…
遂にこの話で初めて、ルカさんのホンネが出ました。冷静に策を講じるルカさんだって、人間の女の子。感情に押しつぶされて平気なわけがありません。でも、それを今まで必至で耐えてきたんですね。ちょっと負けたけど、また仕切直せたようで、良かったと思ってます。
> また二人が元の世界に帰れますように…
是非、そうしたいです。ボカロキャラが演じる世界にバッドエンドは辛いです。
> 今回も感動するような作品、どうも有り難うございます
有り難うございます!!! とっても励みになります! 書いていて14?16話はある意味一続きな感じがしました。通常は1つの話で治めていると思いますが、分けるのもいいですね。
> 次回もお待ちしておりますね♪
はい! 次回はルカのパートから、再びミクのパートに変わります。戦闘準備させないといけないので。
このたびのご閲読、コメント、ブクマ、まことに有り難うございます!
2012/05/16 21:37:04