逆剥けた指先を真っ直ぐに
その丸い月に伸ばして
君はまたくだらない薀蓄を語った
高層ビルの建ち並ぶ中で唯一
自然からの光を辛うじて放つ
その球体は優しく、と同時にとても脆い
昔に割れた丸いランプを思い出して
少しだけ笑みが漏れた
反対色の闇に溶け込んでしまいそうなそれを
僕は、ずっと見ていた

書きかけた手紙の宛先には
きっと君はもう居ないだろうと高を括った
自己完結の悪い癖と
少しだけの安心感と
あの日見た溶け始めの月は
今はもう半分もなくて
すべて滴り落ちてしまう前に
また君に会いたいと思った

僕の秘密が眠るあの場所へ
今度は君を連れて歩いて行こう
溶け出した月が落ちた場所へ
君の手を引いて

かさ付いたその唇を月の形に似せて
君はいつも猫のように笑った
しなやかに伸ばされた腕と 風になびく亜麻色が
僕のどこでもないところを
鷲掴んで引き千切る
立ち入り禁止の看板を掲げて
屋上に浮かぶのは透き通った空
乾ききった喉に広がる月明かりの世界は
広く 淡い
暑さに身を任せて 溶け始めたそれを
君は綺麗だと言った

あの日言えなかったことを
喉元まで迫り上がった想いを
どうか聞いてはくれないかと
僕はまた同じように願う
溶けきった月と
君の居ない夜に

ライセンス

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(non title)

溶け出した月と固体のままの僕ら

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投稿日:2013/06/27 07:50:57

文字数:532文字

カテゴリ:歌詞

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