その日の夕方、神波の大学の最寄りの駅前のカフェ。店内に入った神波を手招きする一団。そのテーブルにはすでに四人いる。
「お待たせしました」
「ティーエフPさん、お待ちしていました。…それでは何か頼んで下さい」
「はい」
この四人は全てPである。まとめ役は最初に神波に声をかけたPである。
「初めまして」
そういってその四人に握手する神波。全員に実際会うのは初めてだった。Pの中には定期的に集まっていて会合を持つPもおり、その一つを高野が神波に紹介したのだ。
「…みなさん、何を話されてたんですか?」
「ああ、ミクさんのバースデーライブの話だよ」
最初に応対してくれたPとは別のPが話す。
「ああ…」
「…確か、千秋楽に行ったって話だったな?」
「はい、リックさんにつれられて」
「…本当にあの人はどこにでもいますね」
さらに別のPが割り込む。
「楽しかったかい?」
優しそうなPが聞く。
「…たまには行っても良いかな、とは思いました」
「ま、その辺は人それぞれだわな」
そんな話をしていると、神波が注文した飲み物が届く。
「…それでは、本題に入りましょうか」
「…それより、ティーエフPはその後のオフ会に参加されたんですよね?」
「…はい、リックさんがライブと一緒に申し込んでいたので、参加しました」
「…俺、その日は開いてなかったからな。行けなかったのが残念だぜ。ワンオフのミクさんからのメッセージもあったんだろ?」
「はい、盛り上がってました」
「なんでそんな日に限って空いてなかったんだよな。ついてねえぜ」
悔しそうに言うPの一人。
「そういえば、参加者リストを見ていたんですが、レポッシュPの名前があったように記憶しているのですが…」
Pの一人が切り出す。その話題を出すことで、その場の空気が若干変わったのは神波にも分かった。
「ああ、それは私も聞きましたね」
「なあ、どうだった?」
三人の視線が集中する。
「…ええっと、いらっしゃったのかな?レポッシュPはよく知らないので、ちょっと気がつかなかったです」
とっさにごまかす神波。
「…まあ、あまり言動が目立つPでないですからね。知らなければ気がつかなかったかもしれないですね」
「…あいつ、来てたのか」
明らかに嫌そうな顔をするPの一人。
「…オフ会中の話は聞きましたが、あまりそのことは話題になってませんね」
「まあ、話題になっていないということは、参加しただけでしょうね」
「…なんでトラブルの種が自分から参加するかねえ?」
いやみったらしい言葉が続く。
「…まあまあ」
そっさになだめるまとめ役のP。
「まあ、いいじゃないですか。レポッシュPが参加しても、何もトラブルは起こってないんですし」
「レポッシュPも色々と思う所があったんだと思います」
その言葉に渋々ながら言葉の矛を収めるP。
(…ごまかしてよかった)
そう思う神波だった。
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