ゆくりさんとホソノさんが、テト・ドールについて、いろいろと話し合っている、その頃。

幕張メッセの「ワンダーランド・ショウ」の会場は、あいかわらず賑やかだった。

れおんさんとルカさんの「ハミングス」のブースは、なかでも一層、盛り上がっていた。

新製品「リンリン・はっちゅーね」を手にしたリンちゃんを、男の子たちが皆で撮影する。
ひとしきり、その騒動が収まって、リンちゃんもファンたちも、何となくホッと一息ついていた。

ブースには、たくさんのお客さんが訪れ、商品を買う人で賑っている。
それを見ながら、ふと、思いついたようにリンちゃんが言った。

「えーと、アタシも、売り子さん、やっていいかなあ」


●リンさんが、売り子をやるって!!

それを聞いて、レオンさんは目を丸くした。
「オー、いえいえ、ソンナ、モッタイナイですよー。可愛いリンちゃんに、販売の手伝いをさせるナンテ!」
ルカさんも、微笑んで言った。
「いいのよ、リンちゃん。気を使わなくて」

彼女は、ニッコリ笑って言った。
「いーえ。アタシけっこう、売り子とか好きなんです。せっかくこんな良い人形とか、作ってもらっちゃって」
大きく目を見開いた。
「手伝わせてくださいな!」

それを聞いて、まわりにいた男の子たちは、嬉しそうな声を上げた。
「おい!リンさんが、売り子さんやるってよ!」
「おお、オレ、もう一個買おう!」
「ボクも!そうだ、ボクも買おっと」

ブースの売り場に立ったリンちゃん目がけて、また行列ができ始めた。


●なんだろう、この人?

その様子を、珍しそうにショウの来場客が、見つめはじめた。
「なに、あの娘、タレントなの?」
「いや、なんか人気のブロガー、らしいですよ」
そんな会話が、ちらほら聞こえる。

さっき、記事を書いてメールを送り終えた駿河ちゃんも、ちょうどその場に戻ってきていた。
「すげえ人気だなあ。まあ、カワイイからね。リンちゃんは。ん?」
ふと彼女は、横にいる人を見つめた。

来場客に混じって、リンちゃんやファンの子たちの賑わいを見ている人。

長い髪を、後ろでゆるやかにまとめて、姿勢も正しく立つ、女の人。
服装はなんだか、女医さんの着る白衣のようだ。

「あれ?この人、女医さんかな?」
駿河ちゃんは、さりげなく横目でその人を観察した。

会場の、コスプレイヤー?いや、違うな。
場違いのようだけど、なんだかこの会場に、馴染んでるようでもある。誰だろう、この人。

その女の人は胸に、会社名の名札を下げている。
「名札だ。ってことは、このショウの出展者の人か?」
彼女はそう思って、気づかれないように、その名札を読もうと、目を凝らした。

「なになに? 出展社、オサカモト・ミウ…?」_(・・?..)?

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

玩具屋カイくんの販売日誌(231) リンちゃんドール、ますます加熱!

神出鬼没な駿河ちゃんも驚く、その人とは?いったい?

閲覧数:74

投稿日:2014/03/21 21:24:26

文字数:1,159文字

カテゴリ:小説

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  • enarin

    enarin

    ご意見・ご感想

    大分遅れましたが、明けましておめでとうございます♪ 今年も宜しくです♪

    さて、リンちゃん、大人気ですね♪ しかも”売り子志願”って言うのは、私がワンフェスやコミケの売る側のお手伝いを経験し、交代時間で会場を回った感じでは、

    ○ブースのグッズの主役(キャラモデル)は、れおんさんが言われるとおり、売り子はさせてもらえないか、ファンサービスの仕事の一環で、あらかじめスケジュールに入っているならやる。ので、自分から売り子を志願する事はない。保安上の事もあります。

    ○そのフィギュアとかグッズを”作った人”、”原型師”さんは、もし売り子が十分にいるなら、他のブースへの挨拶回りで忙しい。売り子不足と人員不足なら、ブース設営から自分と仲間でやり、売り子も交代でやる。関連の他の営業さんは、ブースに来るので、そのとき出てきて応対する。

    そんな感じでしたが、大手は営業の事もあり、更に売り子沢山用意しているので、作った人はずっと挨拶回りで忙しく、モデルや顔の人(たとえばコスプレ写真集の当人)は、スケジュールに売り子が組まれていて、売り子、兼、接客営業、をしてましたね。

    だから、”主役なのに、自分から志願して売り子”をしてくれる、リンちゃんは、神様ですよ~♪

    ではでは~♪

    2015/01/08 11:06:11

    • tamaonion

      tamaonion

      enarinさん、感想をありがとうございます。

      今年もよろしくお願いします!

      >○ブースのグッズの主役(キャラモデル)は、れおんさんが言われるとおり、売り子はさせてもらえないか、ファンサービスの仕事の一環で、あらかじめスケジュールに入っているならやる。ので、自分から売り子を志願する事はない。保安上の事もあります。

      なるほど、実際にワンフェスやコミケの販売のお仕事をされた経験からの意見、ホント勉強になりました。

      保安上の問題とは、気が回りませんでした。それではイケマセンが。
      確かに、自分から売り子を志願するというのは、その場のボルテージを変に上げたりしますよね。

      商材がフィギュアということであれば、やはりそのへんはナーバスに管理しないといけないですね。

      私の守備分野の、雑貨の場合は、作り手が販売するのは結構普通なもので...
      まあ、でも人形、しかも本人だと、また違ってきますね、確かに。


      >”作った人”、”原型師”さんは、もし売り子が十分にいるなら、他のブースへの挨拶回りで忙しい。
      >モデルや顔の人(たとえばコスプレ写真集の当人)は、スケジュールに売り子が組まれていて、売り子、兼、接客営業、をしてましたね。

      そうですかあ、ここも勉強になりました。
      フィギュアの世界では、ネットワークづくりというか、顔つなぎも重要なのですね。
      というか、それが結構一番大切だったりするのかも。

      それに、コスプレ写真集の当人さんなど、すでにプロ意識も充分備わってますね。
      さすがです。

      雑貨の場合は、作って売れれば、それで万々歳(笑)。周りに挨拶はまずしませんネ(笑)
      というか、まわりは商売敵ですし。
      フィギュアみたいな実力の世界と違って、その、パクる輩も多いですからね?

      フィギュアの世界は、けっこう深いですね。プロ意識、肖像権意識もしっかりしてるし。
      勉強になります。でも、ますます関心が深まりました。

      またぜひ、感想を聞かせてください!
      では、また。

      2015/01/12 00:25:45

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