「はぁ?カミサマ?」


いきなり何を言い出すんだろう、初音は。
彼女はいつも、非現実なこととか、あまり信じることができない話ばかりする。


「そ、カミサマ。あんたは信じるか、って聞いてるのよ」


この鈍感、と初音が付け加える。
今それ言うか?


「カミサマねぇ…、どうでもいいけど、どちらかといえば信じてない、かな」
「ふーん…ちょっと意外」
「はぁ?君は、僕がカミサマなんてものを信じてると思っていたのか?」
「そうだけど?」


馬鹿馬鹿しい。
なんで僕が、カミサマなんてものを信じていると?
そんなもの、いるかもわからないというのに。


「だってあんた、そっくりだもの。性格とか考え方とか全部…あいつに」
「はぁ?」
「まぁ、さすがは影神、ということか。代替わりしないから、ほとんど“全て”引き継がれる…なるほどね」
「いや初音。訳がわからないけど、何一人で納得してるんだい?」


それは、初音は『僕がカミサマを信じている』と思っていた理由には、どう考えても繋がらない。
同じ部活に入って結構経つが、相変わらず彼女の性格とかがよくわからなかった。


「もう一度聞きましょう。神威は神を信じる?」
「あまり信じてない。神なんて興味ない」
「へぇ。どうして?」
「神はもう古い存在だ。神はたかが人間が勝手に作った妄想に過ぎない」
「…まさか、私と同じこと言うとはね」


ふふふ、と微妙に笑いながら初音が言った。
本当に、初音は何がしたいんだろう。
ちなみに、グミはお腹がいっぱいで眠くなったのか、机につっぷして寝ていた。
なんだこいつ。


「君は何がしたいんだい?」
「神という存在は、人間というものを余りにも軽視していた」
「それ、イアが初音に初めて会ったときに言ったセリフだろう?それと君の目的は一致しない…」
「おう、ところどころ残ってる記憶があるのね」
「は?」
「あなたはムーンリット・アートも、ほとんど覚えてないみたいだけど。イアってのは、私はまだ一回も口にしてないわよ?」
「……?」


なんでだろう。
自分でもわからないのに、すっと口から出た言葉だった。


「……ま、いっか。いつか戻るわよ、影神のあなたの記憶」


初音は謎発言を残したまま、話をとりあえず終わらせた。
…さっきから気になってるけど、影神ってなんだろう。


「とりあえず、ムーンリット・アートってのはね、月の女神とかいろいろ言われてるのよ」


頼んでもいないのに突然語りだした。


「『ムーンリット・シリーズ』の後継者であり、その読み姫。世界にある“本”を理解し、封ずる者」

「白のworld orderを持つ者」

「七つの大罪を全て犯した罪人『堕天』」

「まぁ、いろいろ言われてるんだけどね。一番有力な説では、『世界を初めて作りあげた神・初代神管である』ってのがあるわね」


「……なんだい、君はさっきから。何が言いたいんだい?」



今日の初音は、突然意味がわからないことを言い出す。
熱でもあるのかな?



「んー、そうね。まぁ適当に端折って言うとね…







    私が、ムーンリット・アートなのよ」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【リレー】僕と彼女の不思議な夏休み 4

閲覧数:347

投稿日:2013/01/05 02:14:19

文字数:1,321文字

カテゴリ:小説

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