4月ももうすぐ終わりに差し掛かり、クラスはもうゴールデンウィークの熱気に包まれていた。
 ただひとり、神威がくぽという人間を除いては。

「……ゴールデンウィークなんてそんないいもんじゃないだろうに……」

 そう、神威は呟いてまた本を読み始めた。確か若い小説家が書いたSF小説で、小説内の登場人物が小説家のいる世界へと飛び出してしまう話だ。

「ありゃ? 神威、またそれ読んでるー」

 そんなことを言ってきたのは後ろの席に座っていた初音だった。

「なんだい、初音は何か持ってないの?」
「私の読んでる奴飽きちゃったー。大抵私にファンタジーなんて似合わないのよー」
「じゃあなんで買ったんだ?」初音の方を見て、神威は言った。
「えー、だって表紙がよかったしー」
「表紙だけで買っちゃそりゃな……」神威の溜息にも似たその声と共にチャイムが鳴った。


≪【オリジナル】笹と理論とプラネタリウム≫


「はい、それじゃ昨日も言ったけど試験するぞー」

 授業開始を報せるチャイムとともに入ってきたリリー先生は、紙束をトントンと整え、そんなことを言った。
 ちなみにクラスの面々は昨日予告していたにもかかわらず。「えー」とか「やだー」とか生徒による罵詈雑言で包まれていた。

「まあまあ、安心しろ。昨日の授業を“ちゃんと”聞いていれば、解るから」リリーはククッ、と悪者のような笑みを零した。「そうだ。私ゴールデンウィークから二週間くらいいないから、休講にするけど課題はいつもの倍。やることは『体内の電子数を試算する』ことだからな? それをA4レポート用紙五枚以上でまとめること。頑張れよ?」

 そう言いながらリリーはプリントを配っていく。やっとプリントが神威のところまでやってきたところで、神威はプリントを眺める。勿論後ろの初音にプリントを回したあとで。
問い1.地球プラネタリウム理論について解説せよ.
問い2.カミサマは存在するか否か.理由も求めよ.
問い3.人間は七つの大罪を持つ.それを答え,理由を述べよ.

 ――なんじゃこりゃ? というのが神威の感想だった。さらにプリントを眺めていくと。

問い17.ツマラナイ世界とは何か?
問い18.ヒトを“ヒト”とする境界,根拠を言え.

「まったくわかんない……」

 神威は呟く。こっそり周りを見ると、みんな頭を抱えていた。だが、答えねば恐らく成績にそのように反映されるのだろう。それを考えて神威はペンを握った。





「そーいや、転校生がくるんだっけか?」

 リリー先生はテスト終了後、回収してそんなことを言った。
 それを聞いてクラスは再びざわつく。

「確か女だったはずだぞ。たぶんGW明けにはくるんじゃないか? 喜んで待ってろよ男子」

 そう言って高笑いしながら、リリー先生は外に出ていった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

笹と理論とプラネタリウム

第4話。

【解説】
 神威が読んでいた本は僕が書いてたリレー小説『僕と彼女の不思議な日常』シリーズに近い話。ちなみに全十三巻らしい。作者は高校生らしい……?
 初音が読んでいた本は同じく僕が書いてた『Quest V』で、全二巻で続きが出てないらしいです。作者は同じ人みたいです。

――

ところで、タイトルに『笹』ってあるのに笹出てきてないですね……w

前作「窓と席替えとクラス代表」:http://piapro.jp/t/UF9J
次作「鯉と連休とアイロニー」:

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投稿日:2012/04/28 19:34:20

文字数:1,189文字

カテゴリ:小説

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