凪ぐ蒼い湖面と 散らばる銀の星
十六夜がゆくのは 水面か夜空か
ひとり佇む子が 伸ばした指の先
その手が望むのは どちらの光か
時の凍る地でも 行く当てのない言葉は
瞬くことも出来ずに 闇に混ざって薄れてく
影に依る術など 遠い空想の世界
無垢な子の手は 求め続ける
月は進んでく 凪いだ夜にさえ
人の心へと 吹き込む風を集め
月は進んでく 遥か遠い地を
人の想いなど 置き去りにしたまま西へ
岸に打ち上がった 一艘の小舟と
空を目指していた 一輪の花と
舟は花の上に 花は舟に絡み
互いのゆく道は 断たれてしまった
緩やかに時間は 月を畔へと運び
月に惹かれる子の手は 冷たい水へ誘われる
触れることも出来ず 水面に身を散らす月
静かな波紋 浮かぶ泡沫
星の降る音に 目線を上げれば
変わらぬ姿で 夜空を旅する月
星が乗り込んだ 月の裏側に
広がる景色は もう過去の遠い思い出
花は枯れて 舟は朽ちて
月もやがて欠けて消える
願いを乗せ 知らぬ顔で
星はどこか零れて行く
廻る景色 暮れる心
人の手には委ねられず 世の理に沿って動く
月は進んでく 進み続けてく
消えた次の夜も 姿を取り戻して
月に届く手は ないと知った子も
流る時の果て いつか辿り着くのだろう
◆ 月の船
Na-Mさんの曲(http://piapro.jp/t/TaMr)を元に
書かせていただきました。
*漢字読み補足
+水面=みなも
++畔=ほとり
+++S3の夜=よ
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