私がお姉様にお会いしたのは卯月の半ば――
桜が終わりの頃の事でした。

当時私は母を病で亡くし、母以外に身寄りと呼べる者が全くおりませんでした。
いえ、正確には父がおりました。
しかし父は私と母とは別に所帯を持っており、父が顔を出すのは極稀でした。
当の私も父の事は幼い頃に辛うじて覚えているだけであり、何よりも私は自分達を捨て置いた人なのだからと互いに言い聞かせながら育った為に父がいたという事実さえ忘れて母と二人暮らしていたのです。

その父が姿を現したのは母の四十九日の終わりでした。
私達に姿を見せなかった父は今までの詫びと称して母の葬儀の資金援助と一人残された私を引き取りたいと申し出ました。
普通ならば自分達を見放した人間を今更こんな事で許せる善人などまず居ないでしょう。
しかし今の私は父に頼らなければ母を満足に弔う事もままならない程生活が良くありませんのは事実です。

私は不本意ながらも申し出を承諾し、
父は母の葬儀は勿論、膨らんでいた借金も全て肩代わりしてくれました。

そして私は父の本妻とその子供が住む家に招かれる事となったのです

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‐雛逃げ‐弐 (百合につき注意)

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投稿日:2010/11/22 23:50:24

文字数:477文字

カテゴリ:小説

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