「先に行ってて。後で行くから、ね?」
泣きじゃくる私に父さんが優しく言ってくれた。私が父さんの声を聴いたのはこれが最後だった。





朝。
グミは起きた。隣のベットには人が寝ていた跡があるがいるはずのルカがいない。グミは食堂へ向かった。大きなテーブルにはグミを入れないで数えると一人しかいない宿の客――ルカがいた。ルカは黒い服に黒いズボンという良く言えばシンプル、悪く言えば地味な格好で朝食を食べていた。
「おはよう。」
グミがルカに言った。
「おはよう。」
ルカもグミに短く返した。
「今日、国を出るよ。」
ルカは言った。グミは朝食のパンに噛り付いた。





中央街を歩く。
店を構えて商売をしている者、楽しそうに買い物をしている者、さまざまな人の声が聞こえる。
「…あれ、食べに行かないか?ボクのお勧めだ。この国でしか食べれない。」
グミが屋台の一つを指差し、その方向へと歩いていく。
パンケーキを薄く広げて焼いた様なものにクリームやフルーツを載せ、巻いたものだった。ルカは二人分買った。グミは頬張りながら幸せそうな笑みを浮かべた。







あの村に来た。グミの故郷の村だ。
丘の上に二人はいた。
「ここが父さんの寝床だ。ここは眺めもいいし空気も綺麗だ。父さんが好きだった場所なんだ。」
グミは言った。
「どうせなら父さんに挨拶してくれないか?父さんもきっと喜ぶ。」
ルカは墓の前にしゃがみ、目を閉じた。数分間そうしていた。








門の前に二人はいた。ルカが出国するのだ。
グミはうつむいていた。
「…なぁ。」
グミは突然声を張りあげた。ルカは振り向いた。
「これ、貰ってくれないか?」
グミがルカに差し出したのはあの時のナイフだ。
「ボクにはもう、必要ないから。」
ルカは無言で受け取った。そして門へと歩いていく。
「なぁ!ボクは、夢を叶えられるかな?!」
グミが泣きながらルカに言った。
「できるよ。」
ルカは振り向かずそれだけ言った。









「なぁ、父さん。私、飛行士になる。まだまだ遠いけど、頑張るよ。」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

探し物 Ⅸ

明日の午前三時に人類は滅亡するらしい。だからこれがもしかしたら最後の投稿になるかもしれない。

ベルーセンズ編終了!頑張った私!
最後のはグミちゃんの台詞です。未来にどうなるかはこの連載が終わった後に書きたいと思っています。この連載終わらないかもですが、もう考えてあるのですよ。
次は[愛]の国 です。

閲覧数:81

投稿日:2011/10/27 20:48:54

文字数:876文字

カテゴリ:小説

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