「…王様。」
静かに呟く俺の声に王はゆっくりとこちらを振り向いた。しかしすぐに背を向け、再びステンドグラスを眺めだす。
「レンか…」
ポツリと言った俺の名だけが、ここに俺がいると彼が認識したことを示していた。
「王様、私の姉は…死にました。」
「そうか…それで、お前はどうするというのじゃ?」
しばしの沈黙を挟みながらも、淡々と二人の会話は続いていった。
「私は王を許せません。」
俺は言い切る。
「それで?」
「今、この場で…」
そこまで言うと俺は、鞘から剣を抜き放ち王へと走りかかった。
「待て、レン。」
俺が後二歩で王に切りかかれるというところまで来たとき、王が手を上げて俺を制した。そこには王者の風格たる物があったのだろう。俺はそこから歩を進めることが出来なくなっていた。
「神官や巫女を殺した今、この国は既に神との戦争状態にある。その中で国の長であるわしを殺すことは、お前がただわしへ反逆したというだけではなく、人類全体を裏切り神に寝返るということを意味するがお前はそれを分かっているのか?」
「俺は、神も殺した。俺は…全てを滅ぼす。姉さんを見捨てた戦争を生んだこの世界全てを!」
王の問いに対する俺の答えは、剣の一突きだった。王はその場に崩れ落ち、ステンドグラスは粉々に砕け散った。
さぞや、大きな音がしたのだろう。外の廊下が騒がしくなり数人の騎士団兵が王室へと駆け込んできた。
「団長!?ここでなにを…」
駆け込んできた一人が俺にそう問いかけるが、すぐに言葉を切る。
「裏切った!王国騎士団長レンが我々を裏切った!」
俺の後ろに横たわる骸を見たのだろう。俺は血の染み込んだ剣を騒ぎ立てる騎士団員達に向けて、彼らを切り払おうとしたが、それは叶わなかった。
王室の天井が鈍い音を立てながら崩れだしたのだ。その瓦礫は俺と騎士団員の間に落ち、双方は動きを止めた。そのとき瓦礫の崩れる隙間から強烈な光と威圧感が漏れ出してきた。
「神だ!」
「逃げろ!」
一体の神が瓦礫の上へと光臨し、恐れをなした騎士団員達は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。神は彼らを追撃しなかった。そして、彼らはまだ幸運だ。後ろに逃げ道があったのだから。俺の後ろに広がるのは、崩れたステンドグラスの向こうの断崖絶壁だった。俺は前に神を砕いたように姉さんのことを想った。しかし、何故だか感じる。この神は前の者とは違って、逆らいがたい何かがある…
俺は思わずその場に跪いてしまった。
「元王国騎士団長レンか?」
神が問いかける。
「…はい。」
理由なんてわからない。自然と口が動いてしまうのだ。
「弓神を殺した者か?」
「…はい。」
「そして、国王を殺した者か?」
「………はい。」
「裏切りに穢れた身よ、忠誠を誓え。」
「…!?」
俺は理解に苦しんだ。恐るべき威圧感で俺を服従させ、神を殺したことを自白させたにもかかわらず、この目の前の神は俺を…勧誘している?
「弓神を殺したのは事故だ。お前はあの時、神を殺す力が己にあると気づいていなかった。そしてお前はそのこと手柄にしようとしたのではなく、逆に神に逆らいし愚かな王を殺害し、神に逆らうことの愚かしさを示した。我々は全ての人間を滅ぼそうというのではない。神に従い、敬う者には再びこの地上を預けようと考えている。その為には、世の者に神に従うように説き伏せる者が必要だ。」
崩壊を続ける城の上部から見事な彫刻が施された巨大な石版が落ちてきた。そこに神が手をかざすと、その根元に一本の剣が生えた。
「さあ、レン。抜け。そして、神に忠誠を誓うよう下界の者に伝えるのだ。」
「はっ!」
俺に迷いはなかった。全てを滅ぼす?俺はなんと馬鹿だったのだろう。姉を殺された憎しみにのみ捕らわれ、そんな戯言を吐いてしまうとは。姉さんとの約束も忘れて…
俺は、静かに剣を引き抜く。すると、俺の服は純白へと変わり、甲冑も聖なる力に包まれた。
「お前を天界騎士団長に任命する。任務を遂行するまで、死ぬことは許さぬ。」
神がそう言うと、俺の指に装飾の施された指輪がはめられた。そして、神が天界に戻るのと同時に城は脆くも崩れ去った。
孤高の騎士―Lost Destination②―
150Pさん(http://piapro.jp/aaa_2009)のLost Destination(http://piapro.jp/t/y0NF)(http://www.nicovideo.jp/watch/sm15271378)を自己解釈たっぷりに小説にさせて頂きました。
また日付が空いちゃいましたね^_^;
この曲は、他の曲に比べて物語が明確に語られていないので、難しいです。でも、どれだけかかっても完結まではいきたいと思います!
見捨てずに、気長にお待ちくださいm(_ _)m
続きはこちら(http://piapro.jp/t/dv2X)
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それ...イカサマ⇔カジノ【自己解釈】
ゆるりー
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