「久しぶり?…どういうことよ、ルカ」
初音はルカに言った。
その疑問はもっともだ。僕も思った。
だって僕らとルカは、つい2時間くらい前まで一緒にいた。
日付は二回目の『10月28日』のままだ。
どうしてそれが「久しぶり」になるのかわからない。
「あら…何を言ってらっしゃるのですか?私はあなた達が神の柵を破壊して去った後、私はあなた達を探してこうして下界に来たのですよ?」
「ルカ、何を言っているんだ?」
「そうよ。あなたの言っていることは間違っているわ」
「なんのことでしょう?」
「あんたが体験した‘‘出来事’’を話して」
「いいですよ」
ルカの言っていることが僕らはまったくわからない。
「あなた達を世界の狭間に送った後、先代神であるカイトが来たのですよ」
「そこは知ってるから。その後私は堕天になり、神威は神になったでしょ?」
「そう。そして柵を破壊し、世界を再構成した後あなた達は下界に帰った。」
どこが違うんだ。
「その時にルカも下界に帰ったはずだ」
「何を言っているのか存知ませんが…世界が再構成されたときに、『箱庭』も再構成されたのですよ」
「だから?」
「私はそこから眠っていまして…目覚めたとき、私は箱庭の『裁判の間』にいました」
…そんな部屋があったのか?
「ミク、そんな部屋あった?」
「あったわよ。スゴロクが入り乱れていたところは『人生の間』。あなたが柵を破壊したときにいた、あの空間よ」
「あそこか…」
「他にも『牢獄の間』、『罪人の間』、『管理の間』とかいろいろあるわよ」
「そう…」
そんなに部屋あったんだ。
「話を続けてもよろしいですか?」
「あぁごめん。続けて」
「はい。『裁判の間』で、私は言われました。『お前は一つミスをした。そのミスをクリアしてこい』と。こうして私はここにきました」
「ミスって何よ?」
「私のミス…それは、侵入者であるあなた達を、処分しそこねたことです」
ルカは左手に光の玉を作り、僕らに構えた。
「ルカ…なんで?」
「ルカは再構成された世界に、ちゃんと僕らと来た。今日、ルカはいつ僕らと放れた?」
「確か、神威が荷物をまとめて理科室を出たときにルカも出たかな?」
「そう。たぶん、一人になったときに箱庭の人間に捕まり眠らされ、そして柵を破壊した後の記憶を削除、または封印された…と推測したほうがいいだろう」
「そんな…」
それしか考えられない。
「ルカ、誰に命令されたの?」
「『VY1』という女性です。私もその方はよく知りません」
「そうかい」
「まぁあなた達も知る必要はありません…だって、ここで消えるのですから」
間違いない。彼女は記憶がなくなっているから、僕らの敵に戻ってしまったんだ。
「そこまでして、そうして私たちを消そうとするのよ」
「そうだ。どうして」
「計画の邪魔をされたくない、というのもありますが…まぁ一番は…」
計画…『神の歯車』だったっけ?
「堕天に直接手を下すというのと」
「それはようするに私ね…別に神威は消す必要がないでしょうよ」
「いいえ。私は、ちゃんと自分が撒いた種をですね…」
「ルカは僕とは、赤の他人だろう?」
「いいえ、違います。あなたは思い出せませんか?」
思い出せない?なんのことだ。
「私とあなたは、前世では恋人同士…そして転生し今に至り、私が神になる前は、あなたは私の弟ですよ…がくぽ」
「え…?」
「幼いころ、私はあなたをかばい死にました。そして箱庭に行ったのですよ」
「ちょっと待って…僕には姉さんの記憶なんか…」
「あなたが五歳くらいのとき、あなたも事故にあっているはず。そのときの後遺症で、私のことも忘れたのかしら?」
「!」
うっすらと思い出した、姉の記憶。
確かに、外見や雰囲気、喋り方や面影も、ルカと姉さんはそっくりだ。
「ちょっと待って…だったら、あんた…」
だとしたら…目の前にいるのは、僕の肉親。大切な姉。
僕は、もう大切な人を失いたくなんかない。
でも戦わなければ僕らは死ぬ。
もし戦うとしても…僕じゃ…
僕は姉さんを、傷つけることができない…
僕じゃ、戦えないんだ。
「がくぽは何も手出しできませんね…」
「神威、さがってて…他人の私なら戦える」
「でも…」
「大丈夫。きっと、きっとあなたの姉を…ルカを、元に戻してみせるから」
「ミク…」
「だから、あなたは先に『箱庭』に行って。さよなら」
「ミク!」
ミクは、姉さんに向かって走っていった。
僕は箱庭の入り口に走る。
「…まぁいい。あとで追いついて、あの時殺しそびれた愚弟の処分をしますから」
僕とミク、それぞれの戦いが始まる。
計画をとめるために。
僕と彼女の不思議な校内探検 18【リレー】
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