蟻ノ牙

春が来ました
桜が咲いて　通学路を綺麗に染めていくのに
そんなことを見ている余裕は
残念ながら私にはなくて
真っ赤な目で　くしゃみをひとつ
忌々しい春め
自転車をこぎながら
どこかで聞こえた音は　聞こえなかったことにした
前はこんなんじゃなかったとか
前は平気だったのにとか...

裁判を始めましょう
（さぁ、遊びを始めましょう）
そいつをここへ連れてきなさい
私の前にひれ伏すがいいわ
あぁ、最後の弁解くらい聞いてあげる
ほら話してご覧なさい
がなり立てるだけの弁解は要らないの
ちゃんと私を満足させるだけの
弁解を話して見せるといいわ
（だけど王女は思ってる）...

紅と黄色どっちを選ぶ？
どっちも苦痛だらけの険しい道
だけどもしも
どちらかを選ばなければいけないなら
紅い地獄は狂気の時間
じわじわと心を蝕んで
ある日ぷつりと糸が切れるような
壊れる予兆がありありと
見て取れるような荊道
黄色い檻は耐える苦しみ...

白木蓮は春に咲く
冬の名残みたいに
雪みたいに真っ白な華は
春よりもどことなく　冬に近い気がするの
優しい香りを漂わせて
冬が消えて　春が来て
春の雪が咲き始める
桃色　紅色
春らしい木蓮より
冬のような白木蓮が...

オリジナルの私の気持ち
伝えたくったってさ
ほとんど全て誰かの手が付けられた後なの
大体言葉が少なすぎるんだ
こうなりゃ自分で言葉もつくっちゃう？
こんなにたくさんの色が混じり合う中じゃ
埋もれる　埋もれる
もう、どれが本当なんだか
オリジナルの意味さえ忘れそう
それに言葉が頼りなさすぎるんだ...

私は光化学オキシダント
周りに毒をまき散らしながら生きてるの
私のなかには毒がいっぱい
甘い毒も、痺れる毒も、痛い毒も、
呼吸ができなくなっちゃう毒だってもってるんだから
だからね、あんまりバカにしてると
そのうち私の毒にやられちゃうよ？
私の毒は抗体がないんだから
私は光化学オキシダント
私を生み...

「始まるよ、始まるよ、理不尽な裁判が始まるよ。」
今宵裁かれるは茶会の主人
欲深きかな　このお人
もっと注いで　「おかわりいかが？」
帰るなんて言わないで
ずっと居てよ　「もっとお喋りしてようよ」
帰る気なんか亡くしてあげる
「帰り道はわかるのかい？帰るトコロはあるのかい？」
美味しい紅茶と甘いお菓...