そういうミク
わたしのミクはほかのミクのように流行りの曲をうたったり
かわいらしい曲をうたったりすることがなかった。
はじめて目覚めた時から
ミクは毎日をわたしの曲のなかですごし、わたしの詩のなかで眠った。
無垢な瞳はにごり、ぎらぎらしたひかりをはなち
からだは暗く、闇に溶けるような細さになった。
話す言葉は冷淡で、金属の音色がとおくから聞こえてくるような声になった。
可愛さなどない。
可憐さもない。
でもときどき、iPodのむこうがわから
「マスター、あなたのミクで、よかった。」
と、語りかけてくる。