sunny_mの投稿作品一覧
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王宮へ戻り、リンの生活は元に戻った。
相変わらず皆リンに優しく、レンはなんでも言うことを聞いてくれる。だけど、リンの心は晴れなかった。何かがうまく行かなかった。なにをしてても楽しくなかった。酷くイライラして、訳も無く周囲に当り散らした。それでも優しい世界に、酷い嫌悪感を持った。自分はこんなにも醜い...悪の王国8 ~悪の娘~
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数日後、母の葬儀も滞りなく終え、リンとレンが王宮に戻る日が近づいた頃、カイトが二人を街へと誘った。
「リンも折角王宮以外の場所へ来たんだ。羽を伸ばさないとね。」
そうカイトが屈託なく言う。その無邪気な笑顔に、レンにリンの傍から離れたほうが良いといったことはまるで夢だったように感じられた。
「いいわ...悪の王国7 ~悪の娘~
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カイトの話は面白かった。彼の住む国は貿易が盛んなことが有名で、それもあってかカイトは勉強だと称して色んなところへ旅に出ていた。本の中でしか知らない、外の国の話。カイトの話にリンは目を輝かせ聞き入った。
「ところで、リン、何故レンは召使なんだい?」
話の合間にふと、カイトがそう尋ねてきた。
傍で給...悪の王国6 ~悪の娘~
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母上様の葬儀は彼女が住んでいたと言う海辺の街で行われることになり、リンはレンと共にそこへ向かった。思えば、リンが王都から出るのはこれが初めてだった。
馬車の窓から見える街道の様子が物珍しく、リンは喜んだが、レンは相変わらず悲しげで、そのことがリンには辛かった。
海辺の街の、大きな屋敷でリンは、...悪の王国5 ~悪の娘~
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穏やかなピアノの音でリンは目を覚ました。夢の中でも同じ曲が流れていた。優しい、優しい夢だった。
心地よい眠りからゆっくりと覚醒すると、帳の外から傍つきの女官がおはようございます、と声をかけてきた。
「今日は良い天気ですよ、リン様。」
ピアノの音は変わらず流れている。女官の言葉通り、窓の外からは白...悪の王国4 ~悪の娘~
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この話は、酷い描写が含まれています。
辛い話が苦手な方はご遠慮ください。
なれない、召使の仕事はレンを苦しめた。手は荒れ、日に焼け、細かった腕には筋肉がついた。何よりも、精神的に辛かった。今まで命令する側だったのに、今まで下に見ていたものたちから命令されるのだ。屈辱を感じた。
それでも母の待つ街へ...悪の王国3 ~悪の召使~
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レンは、海辺の街で母と一緒に暮らした。
母を護ってくれたのは、この街の領主。レンは何不自由なく、むしろ王宮に居た頃よりも自由に暮らしていた。
王都からの噂で、父王が相変わらずおろかな振る舞いをしているのだ、と聞いた。
海辺の街で、レンはリンの事を思った。
リンに会いたいと思った。
ある夜...悪の王国2 ~悪の召使~
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ぼく達は2人で一つ。
まだ幼い頃、ぼくらは2人で一つだった。
共に笑い共に悲しみ、離れることなどありえなかった。
人々はぼくらの事を王子と呼び王女と呼んだ。
皆、優しかった。世界は優しかった。
それが、ずっと、続くと思っていた。
この国は既に傾いていた。愚かな王が続き民は圧政に苦しんで...悪の王国1 ~悪の召使~