七瀬　瑞樹

許してあげようか？
そう囁くと顔を上げる君。
そう囁くと顔を輝かせる君。
この瞬間が大好きだ。
この瞬間が大嫌いだ。
人の死は、醜い。
空虚なその瞳が醜い。
けれど、その瞳が愛しい。
さよなら、さよなら。
心を殺さずには居られない。...

人が死んだら、どこへ行くのだろう。
天国なんてものがあるのなら、
どうか、僕をそこに連れて行っておくれ。
もう、心残りなど無いのだから。
可愛い可愛い、僕の兄弟。
可愛い可愛い、僕だけの。
狂ったような、けれどそれ以上に愛しかった妹はもう居ない。
どうして、なんていわない。
だれよりもわかってる。
...

僕は人形。
人間に動かしてもらわないと動けないこの身。
僕は人形。
そこにいる君が愛しいのに、
僕は人形。
君は人間。
君は僕を触らない。
僕は人形。
何も喋らない。
何も伝えられない。...

何も見えない。
何も見えない。
眩しいほど輝いてた太陽（きみ）が、
今では見つけられなくて、
僕は迷ってしまった。
暗い暗い、この道を、
僕はどう歩けばいい？
どう動けば、太陽（きみ）を見つけられる？
僕には何も出来ない。
きみが消えるまで、何一つ気づくこともできなかった。...