『メイドなわたしに青春ラブコメは要らない!2』
○第2話「わたし、先輩の特別なOnly One!?」
あの事件から2週間が経つ。
季節はもう10月中旬、空気は少し肌寒くなってきた。
ムシしてもよかった。
でも、何となくムシするのも悪いし、ムシはやめておこうかなと。
わたしが体調を崩してしまって、一度の延期を挟んだ。
そんなこともあったけど、今日、先輩とランチに来ている。
そしてさっきから、あの曲が頭の中で止まらない。「花屋の店先に並んだ〜♪」
◇ ◇ ◇
駅の改札口前、わたしは白のブラウス、クリーム色のニットのカーディガン、下はふわりボルドーのスカート、足下は黒のローファー。
女の子らしい格好。
今日のコーデは全く自分っぽくないし…と、
年齢=彼氏いない歴のわたしは思う。
結局、メイドカフェでのバイトは辞めてない。(金欠はまだ続いている…泣)
今日の服はバイト先の女の子にもらった。
サヤちゃんというのだけれど、
サヤはかわいいフリフリが死ぬほど好きらしくて、
そういうの持ってないと話すと、
「あたしのあげるぅ」と言って、くれたのだ。(半分は押し付けだったけど…)
今日はもらった数着の中でも一番地味なスカートを選んだ。
さすがにあの白いミニのフリルスカートとか無理だったよ、サヤ。
そして今、わたしは先輩を待っている…
待ち合わせの駅改札口前に現れた池内先輩。
先週、体調崩してすみませんと謝ると、先輩は気にしてないと言ってくれた。
私たちは最近オープンしたアジア料理レストランへ。(やり直しなのでわたしのチョイス)
店内は、何やらアジアンな内装だ。
入り口に入ると、レジの隣に鎮座する黒い悪魔なのか犬なのか定かでない銅像。
白目をむき、牙がむき出しの…
あれ?この犬らしきもの、誰かに似てる…
あ、SM○Pの中居くん(変顔)だ。
「花屋の店先に〜」と歌うしゃがれ声が流れ出す。
席に着くと、ウエイターがメニューを持ってきた。
何やら、メニューに日本語が書かれている。
「私たちの蒸し料理 No.1」
アジアンなウエイターさん…
(あ、草薙くんに似てる…)の日本語はカタコト。
仕方なく、私と先輩は写真を見て、お肉っぽい物を指差しで注文した。
注文を終えると、先輩が尋ねてきた。
「そういえば、時藤ってなんでメイドカフェで働いてるんだ?」
「それは、えっと、お金がなくて、少しでも割のいいバイトをと思って、でも早くもやや挫折気味ですけどね」
「そうなのか…大変だな。でも今日もだけど、時藤って服とメイクで印象変わるから、全然良かったと思ったけど」
「え? そ、そうですか?」
「うん、サークルの時はもっと、硬派な感じだけど、垢抜けたっていうか」
最近、バイトの影響でメイクは、勉強している。先輩も気づいてるのかも。
「先輩はどうしてメイドカフェに来てたんですか? もしかしてそういう…」
その時、アジアンな草薙くんが、カタコトの日本語で、
#%*+=$€#%*+デ〜ス。と料理を運んできた。
ムシしなければよかった…
ボケボケのメニューの写真では、判然とせず、お肉かと思って注文した物は…コウロギのソテー。
たくさんのコウロギの眼がジッとこちらを睨む。
「うわー!!虫?!」
「私たちの"蒸し"料理 No.1」って、
○虫 ×蒸し
妙なところで頑張って漢字使おうとするなよ!( ; ; )
「せ、先輩…すみません。私…虫はほんとダメなんです!!」
引きつる顔はvivaさっきの中居くん(変顔)
(花屋の店先に〜♪)
No.1になれないからって、日本でOnly one目指し過ぎじゃ?
すぐにコロオギは下げてもらった。
「意外だな、時藤って虫苦手なんだ」
わたしも一応女の子です、先輩(つД`)ノ
その他の注文した料理はまともで、特にサラダは美味しい。
「あ、そのサラダ、食べられる花らしいよ」
もういいわ!オンリーワン(つД`)ノ
◇ ◇ ◇
料理も一通り出揃い、私たちは箸を進めている。
「先輩はどうしてメイドカフェなんかに」
「ああ、それは、資料集めって言うのかな」
「資料…ですか?」
「趣味で小説を書いてるんだけど、メイドカフェの雰囲気が知りたくて」
「え?小説って…先輩がですか?」
「ああ、書いて、自分のブログに載せるくらいだけどね」
へぇ、知らなかった。わたしは小さい頃長く入院していたことがあって、その時から読書好きだから、少し感心してしまう。
「じゃ今日、私をご飯に誘ったのは…」
と、その時、何やら首元にモゾモゾ違和感を感じる。
「時藤、動くなよ」
えっ?え?何?
私は動転して、違和感のその先に手を伸ばしてしまう。
ガサガサ…この感触…
「うぁー!!!ムシー!!!!!うぁー!!」
しかも、触った拍子に、うごめくモゾモゾは首口からブラウスの中に入ったー!?
モゾモゾ…モゾモゾ…モゾモゾ…
「ぎゃー、先輩!た、助けて!!」
背中でモゾモゾとうごめいて
「とって!うあーー!!!」
立ち上がった先輩は…あたふたしてるし!
まだ、ムシが背中のブラのひもの所で、
モゾモゾ…モゾモゾ…モゾモゾ
「うわー!早く、何でもいいから、どうにかして下さい!!!」
「時藤、本当に、い、いいんだな。ごめん!」
先輩は私の上着に腕を差し入れ…
「こんなこと初めてだと思うわ…」
ムシよ、わたしを先輩の特別なOnly Oneにしなくてもいいのに…( ; ; )
◇ ◇ ◇
どうやら、食材のコウロギが一匹逃げ出したらしい。
2週間前のメイドカフェに続き、今日はさらに…
思い出すだけでも恥ずかしい。
あれだけ狼狽し、挙句の果てに先輩に服に手を入れてとってもらうなんて…
逆に、先輩にはすまなかったと謝られたけど…
こちらが迷惑かけてばかりで泣けてくる。
店を出るタイミングで、
「先輩、少し待ってて下さい。ちょっとお手洗い行きたいので」
そう言ってわたしはトイレに行き、薬を飲んだ。
帰り際、プラットホームに私と先輩は並び、電車をまっている…
先輩の横顔…先輩は一体どう思ってるのだろう。きっと呆れてしまったかな。
でも、本の話とかできて、先輩におすすめの本とか聞いたり、わたしの好きな作家さん薦めたりして…そこの部分は楽しかったと思うし、先輩も…
そんなことを考えたいると、少し景色がくらっとする。
今日は色々あって、またちょっとしんどくなってしまったみたい。
「時藤、まだ体調良くないのか? だったらごめん」
「そんなに心配しなくても…、体調崩しやすいだけです…」
「そうか…」
私たちの乗る電車が、音を立ててやってくる。
「時藤…今日は楽しかった。また今度誘っていいか?」
私は「はい」と答えていた。
続く…
メイドなわたしに青春ラブコメは要らない!2 〜わたし、先輩の特別なOnly One!?〜
こんにちは。ひとみゆうです。
新年明けましておめでとうございます。
時藤めいこ18歳、池内真斗20歳のラブコメ第2話です。
読んで頂けた方がいましたら、ありがとうございます。涙して喜んでます。
ご飯に行った2人。少しだけ女の子っぽくなっためいこ、そして、池内先輩との距離がちょびっと縮まった様な…
こんな拙い話ですが、続きを少しずつ書いていく予定です。
よろしけれ、2人の行く末を見守り下さい。
第一話はこちら→ http://piapro.jp/t/A8oV
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