辞書を開く
そこには一般的な意味が書いてある
そこには一般的な認識が書いてある
「それ」は「認めるべきもの」だった
「それ」は「愛すべきもの」だった
よくわかっていた
よく知っていた
私だってそう望んでいた
そう在ってくれると期待していた
辞書を開く
そこには私の経験が載っていた
そこには私の認識が載っていた
「それ」は「認められない」ものだった
「それ」は「憎むべき」ものだった
「それ」を「認める」ということは、
「私」を「全否定する」ことだった
だから私は、認めるわけにはいかなかった
否定するしかできなかった
私は、私を否定する意見も受け入れて、
それでも私を肯定したかった
肯定して欲しかった
辞書を開く
そこには彼女の経験が垣間見えた
そこには彼女の認識が垣間見えた
「それ」は「認めるべきもの」だった
「それ」は「愛すべきもの」だった
私は少し絶望した
絶望した上で
それを書き換えてやりたいと躍起になった
私は否定されることが嫌いだった
単純だ
それだけの話だったのだ
彼女は私の辞書を見た
彼女はその意味をすんなりと認識した
それが私の辞書であり、
それが私にとっての意味であることを
すんなりと認めた。
彼女は彼女自身の辞書を書き換えないまま
私自身の辞書を横に置いた
それで良かった
それで私はようやくいからせた肩を降ろす事が出来た
私は彼女自身の辞書を開いた
もう書き換えようとは思わなかった
ただ私自身の辞書の横に
彼女の辞書も置いた
いくつもの辞書が並ぶのを見た
<常識>の辞書も置いてある
私を否定した人の辞書も置いてある
その中に彼女の辞書を置けた事が
私に安堵を与えた
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