【紅キ剣】


「父上、修行をして参ります！」

むかしむかしあるところに
大陸屈指の王国の
剣技を極めた艶兄姫（あでえひめ）
突然　城を飛び出した

悪名高き『青の国』は
いずれ我が国を脅かす
そうなる前に我が国も
策を講じる要がある

『緑の国』と『黄の国』が
味方につけば心強い
国の現状を掴むには
市中（いちなか）が好都合

「さあ、かかってきなさい！」

紅き剣　瀟洒に咲く
鮮やかな彩りで
許多（あまた）の剣士を虜にし
嗚呼　時代の渦へと飲まれ往く


『緑の国』は温厚で
武力は弱いが世評善し
けれども隣の『黄の国』は
『悪ノ娘』が枉屈（おうくつ）す

私欲に駆られた黄の王女
『緑の国』に進軍した
緑を取り込み『黄の国』は
一躍大国の名を得る

勢いをつけた『黄の国』は
更に悪政を無理強いる
苦しむ人々の嘆きは
王女には届かない

「このままで良い筈はない！」

紅き剣　瀟洒に咲く
狂おしい彩りで
黄の国民たちを率いて
嗚呼　『悪ノ娘』を征伐す


捕らえた王女は牢獄で
気丈に　凛と鎮座する
何を問うても答えずに
侮蔑の瞳を向けるだけ

処刑の時間は午後三時
教会の鐘が鳴る時間
王女と呼ばれたその人は
知る人ぞ知る台詞を云う

亡骸を処分する者は
『悪ノ娘』の付き翁（おきな）
依然としてある相違感
紅き剣は糺す

「本物の王女はどこだ」

紅き剣　瀟洒に咲く
悲しげな彩りで
欺かれた正義の刃（やいば）
嗚呼　全ては『青の国』の奸計


むかしむかしあるところに
悪逆非道の王国の
頂点に君臨してた
齢十四の王女様

犠牲になったは血を分けた
顔のよく似た召使
半身奪われ意気阻喪
墓石の前に蹲踞（そんきょ）する

「全ては大臣らの仕業」
「『青の国』の奇計通り」
翁に王女を委ねられ
紅き剣は承ける

「お任せください　責任をもって…」

紅き剣　瀟洒に発つ
鮮やかな彩りで
緑と黄の遺恨の思念
嗚呼　赤が受け継ぎ晴らしましょう