「君が〝星座〟か」

 君のことは大嫌いだ、何がしたいのか良く分からないよ。

 〝結晶〟がそう僕の方をみて鼻で笑った。

何をしたいんだよ馬鹿じゃないのか。おかっぱ頭の黒い髪の毛が、僕のことをあざ笑うかのように、風に揺れて、ふわりとなびく。

「たいした能力もないのに、そんな金属のガラクタをつくったぐらいで、先生の所へ行こうなんて思い上がりも甚だしい」

 どいてよ、邪魔だ。
結晶はそう僕のことをまるで生ゴミでもみるような目でみると、つま先をくいっとふって進む方向から消えるように促した。
 
 なんだよ、あいつ、少し憤った僕を背にして振り返る間もなく、硝子の眼鏡をかけて、しゃきっと背を伸ばしたまま、あっというまにどこかへいなくなってしまった。

 なんだかどうしていいのかわからなかったし、こんなに誰かに嫌われるのは初めてだったから少し落ち込んだ。二度とあわないといいな、と思った。主人公はわりと仲良くしたいの
 「どうかしました?」
あおぞらが落ち込む僕を気づかってかそう、首をかしげながら聞いてくる。
「ううん、なんでもないよ」
あんまり悲しい顔ばかりしてると、本当につらくなりそうだから、適当な笑顔でごまかした。
 沈んだ気分もすぐに吹き飛ばしてくれるぐらいに〝弦の街〟は賑やかだ。(ほんとはこういうのは描写を重ね、読者にゆだねる、作品は読者のもの)
 石造りの街には僕の知らないものがたくさんあった。
 あおぞらもここに来るのは初めてなのだろうか、ふたりであたりをキョロキョロしながら、見て回った。
 街の作りはこんな風だ
(イラスト概要)
・時計塔(鐘)
・図書館(昔は鍵盤が)
・公共音楽ホール
  ⬇これ有効?
・美術館(金管、木管)
・彫刻
・弦は何に使用?
・城下町?
・街は西洋、人は東洋
・中央階段螺旋塔(下?上?こっから星を見る?) 
・街レベルでのオーケストラ?
・凧上げ、鉱石
・街の中には六個の音楽ポイント
 笛、金管、木管、鍵盤、打楽器
弦、彫刻?建物レベル?
・先生と父親は友達
・地味なので、なんか派手なものを一つは用意したい。狂気モード

 石畳の路地は、歩くと乾いた音を立て、いつものように爽快な気分になった。自分の知らない世界が広がっている。その世界にほんの一歩でも踏み出すことはなんと楽しいことか。
 初めて空を見上げて、星座の名前を、教えてもらったときにも同じように夢中になった。一つ一つの光には神話が込められ、意味があるのだ。
 たいていの神話は、人知を超えた神様たちが織りなす、浪漫のあふれる物語ばかりで、そういうものも悪くはないと思ったけれど
 その中でも一番僕が好きな神話は
〝絶望〟を司る人間のお話。
神様に虐げられ、すべての人に見放された。小さな街に住む男が、あらゆるものに復讐していくのだ。
 地上を焼き、屍を大量に積み重ね
男はやがて天までのし上がっていく。全身を黒衣に包み、蒼白な顔をして、神様たちを一人ずつ、バラバラに引きちぎっていく。
 けれども結局最後には男も捕えられ、全身を鎖に包まれて、そのまま天の炎に焼かれ、黒い灰となり、地下深くに掘られた、穴の中へと灰はばらまかれた。
 無数の神話の中で、これだけが唯一、人間を主人公にしたお話だった。

 この街からでも夜になれば、星をみることができるだろうか、なるべく高くて、明かりが少ない場所がいい。街中を歩きながらそうやって空想に耽る。
 
 広場では子供たちが、はしゃぎながら遊んでいた。小さな女の子が
なんだか一心不乱になって、落書きを書き続けていた。
 小さな白いチョークで、大きな人形の絵が石畳に描かれ、その横を乱暴に男の子たちが走り回りながら、落書きを踏み消していく。
女の子は一人だ。
 なんだかどうにも気になってしまい、しゃがみ込んで話しかけてみた。

「上手だね、お絵描き」
小さな女の子は、どきりとしたようにこちらを見上げ、少し照れて、はにかんだような笑顔を見せた。
 汚れた服を少し恥ずかしげに、はたいて、異国風の服装をしゃっきりと伸ばし、それから僕の視線があちこちの落書きに向いているのを見るときまりが悪くなったのか、逃げ出してしまった。
 やれやれ、なんだか申し訳ないことをしてしまったように思う。
こんなつもりじゃなかったのだけど、うまく他人と話すのは難しい。  
 もう少し器用にできれば、結晶ともうまくやれたかもしれないのに。
 チョークの落書きが残る街の中央付近の噴水を抜けて
横町を通り過ぎると、中央の大階段から、街の中心となる。弦の張り巡らされた城が見えた。
 ここは不思議な街だ。
 何に使うのかも良くわかない弦が街中の主要部には張り巡らされ、時折風に揺れて、シュルシュルラララと奇妙な音を奏でている。
 そのうち誰かに聞いてみよう、知らないものばかりで、見るもの聞くものすべて真新しかった。
「あおぞら、どこに向かうの?」
「とりあえず、泊まるとこ探しましょう」
城壁の隣を歩き、壁一面に刻まれた無数の円の図形や、数式、隣にたてられた説明文を読めば、何でも人間の感情を数式に込め、喜怒哀楽を制御した者が昔ここにはいたらしい。  
 もっとよく見て解析したい誘惑に駆られたが、あおぞらに渋い顔をされて、泣く泣くあきらめた。
 王都へたどり着くのは少し、遅くなってしまいそうだが、この街だけでも、学びたいことは多すぎて、しばらく飽きることはなさそうだ。
 鼻歌を歌いながら
「ほら、あおぞら、はやくいこうよ」
 羽ばたく足をつかみ、ふざけて凧のように滑空させながら、おもわずはしゃいでしまう。
 宿泊する建物はすぐに見つかった。生まれて初めての体験に、受付で戸惑ってしまうけど

金縁の看板と板それから

「ふかふかだよ」
ベッドの上は、なれないぐらいに
沈み込んで僕の体に残る疲れは吹き飛びそうだ。

ゼンマイ仕掛けの心臓に、レンズのはめ込まれた、真鍮の仮面をかぶり
音もなく近づく。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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結晶と星座

閲覧数:177

投稿日:2012/05/16 21:22:31

文字数:2,483文字

カテゴリ:小説

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