男の腕に抱きかかえられ、アリスは房室に戻った。
このぬくもりを誰にも取られたくないと
このぬくもりをもう失いたくないと
ぎゅっと抱きついたまま眠る。
布越しに伝わるぬくもりは、
もう居ない父、響弥のぬくもりに似ていて安心した。

男はアリスの頭をポンポンとなでて、
寝台にアリスを寝かせる。
無意識のうちに力が入っているため、
なかなか離れないアリスの手をそっと引き剥がす。

「クレイマー、アリスちゃんを頼んだよ」
頭を下げるユリウスにそういい残して
男は衝立の向こうに消えていった。

ダダダッ ダダダダダッ

暖かい光がコッチに走って来る
そう、アリスは感じて目を覚ました。
頬に流れていた涙の筋を拭いて姿勢を正す。
好きな人に、少しでもいい姿を見せために。

ようやく逢えると頬にまた涙が伝う。
「大丈夫?傷が痛むのかな?」
「ううん、大丈夫。なんでもない」
その優しい声色にアリスは顔を上げ、否定する。
この世界に来たときに出会った少年。
柔和な顔立ちの少年に笑顔を作る。

衝立の奥からクルンとした大きい瞳を持つ
紫色の少女が入ってきた。

「ユリウス、お茶持ってきたよ」
「有難う、ルディー」
「で、弥生の対はこのおちびちゃん?」
「そうだよ。」
「おちびちゃん、どうぞ」
「あ、ありがとう」

花茶を手渡し、アリスの隣に少女は座った。
「おちびちゃん、僕はルディガー。
ルディガー・クルマンって言うんだ。
おちびちゃんの名前教えて」
「夢宮アリス」
「アリスちゃんかあ。
さっきは助けられなくて、…ごめん。
僕が気をつけなきゃいけなかったのに」
「ルディガーさんは悪くないから、あやまらないで。
でも、気を使ってくれてアリガト」
「………ありがと。
…足出して。治してあげるから」

アリスの足にルディガーが手を伸ばすと
淡い光が集まってくる。
暖かいその光が人の再生能力を高めてくれるのだ。

「さて傷も治ったし、次は服だね。
アリス、この中から着る服選んで。
そろそろ弥生も来るから綺麗にしないとね」
「あっうん。…これがいい」
「着方はわかるかい?」
「うん。これだったら大丈夫」
「僕たちは男だから、奥で準備してるよ。
終わったら、呼んでね」
「……?…うん」
ルディガーが男って言ったことを不思議に思いつつも
アリスは着替えだした。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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Innocent Baby 第拾話

お待たせしました。
ようやく10話です。
弥生君まだ出て来れなくてすみません
そして、ルディガーの秘密とは…

閲覧数:192

投稿日:2011/01/29 03:50:59

文字数:980文字

カテゴリ:小説

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