光が見える。
スポットライトの光が一つ、二つ、ここから確認できるだけでも、六つだ。
俺は雑草の茂みに身を紛れさせ、双眼鏡でその光の先を観察していた。
そこには、俺の目標である、建造物が聳え立っていた。
まずここから一番近いのは、あの鉄条網がついたフェンス。恐らく高圧電流が流れている。
そしてその向こう側には、数人の兵士がコンクリートの壁に沿って巡回に当たっている。
コンクリートの向こう側には何かの施設らしきものが伺える。
それもかなり広大だ。
やはり大陸間弾道ミサイルを発射するだけのことはある。
これでは、目標の達成はかなり骨が折れそうだ。
そのとき大佐からの無線が届いた。
『タイトさん。核発射施設前に到着したようですね。』
「ああ。」
『施設内部に潜入するには、まず高圧電流の流れている鉄条網をどうにかしなければなりません。どこかに電源を供給する装置があるはずです。注意深く探索し、発見したらボルトガンで破壊してください。警備は当然、今までとは比較になりません。ここまで来て発見されないでください。』
そのとき、双眼鏡の中央に鉄条網の端に取り付けられた機械が映った。
「分かっている。丁度今見つけたところだ。」
『そうですか。施設内部に潜入が成功したら、こちらから無線を入れます。』
無線を終了すると、俺は最初に警備の人数を確認した。
聳え立つコンクリートの壁の前には、四人の兵士が十メートル程度の間隔で立っている。
彼らは微動だにせず、俺が隠れている茂みに視線を送っている。
俺は姿勢を低くして茂みに伏せた。
そのまま匍匐前進をして、静かに鉄条網へと近づいていった。
雑草で視界はほぼ覆われている。だが、草を掻き分ければ敵に気付かれる。
進む先は、先程見つけた鉄条網への電源供給装置だ。
進むにつれて雑草が途切れていく。
その雑草の合い間から、例の電源供給装置が見えた。
俺はボルトガンをホルスターから抜いたが、一瞬、戸惑った。
どうする・・・・・・ここでボルトガンを発射すれば、たとえ発砲音を気付かれなくても、電源が破壊されたことに絶対に気付かれるはずだ。
しかし、この鉄条網を抜ける以外、施設に潜入する方法はない。
あの兵士の中の一人でも撃てば、たちまち警戒が厳しくなってしまう。
こういう場合は、逆に大胆な行動のほうが効果がある。
俺は平然と匍匐からしゃがんだ状態になり、ボルトガンの照準を敵兵の一人に定めた。
そして、引き金を引いた。
鋭く電撃の爆ぜる音が一瞬虚空に飛散し、蒼白い電流が兵士の一人に吸い寄せられていった。
「ぐッ・・・・・・!」
電撃に全身を蹂躙された兵士が、音もなく沈黙した。
「どうした?」
ボルトガンの発砲音ではなく仲間の異常に注意を引かれた見方の三人が、草むらの中に沈んだ兵士に近づいていった。
すかさずボルトガンのチャージレバーを引き、二発目の電撃を放つ。
電流が直撃した兵士が、雑草の中に倒れる。
その現象を目の当たりにした兵士二人が平常心を保っていられないのは当然だ。
「敵襲だ!本部へ連絡しろ!」
そう叫んだ敵兵の頭部に、再び照準を合わせる。
発射。また一人雑草の茂みへと沈む。
そして、兵士は残り一人となった。
「本部、本部応答せよ!」
『こちら警備本部。どうした。』
その無線は俺のナノマシン無線が鮮明に傍受している。
「味方がやらッ・・・・・・。」
何かを言いかけた最後の一人の手から、無線機が落ちた。
俺は引き金から指を離した。
これで警備はいない。後は電流が流れている鉄条網フェンスに電力を供給している電力装置を破壊するだけだ。
俺は五メートル先の電力装置に向け、電撃を放った。
装置は火花を撒き散らし、爆発した。
こうして、俺は堂々とフェンスの南京錠をボルトガンで打ち壊し、コンクリートの壁の前へと来た。
そこには車両のための巨大なゲートがあるが、無論閉ざされている。
しかし、この巡回兵達が来た扉がどこかにあるはずだ。
『どうした応答せよ!』
そのとき、無線が敵の声を傍受した。
さっき兵士と会話していた、警備本部の声だ。
『何があった?!』
まさか・・・・・・。
『緊急態発生!増援部隊、南ゲート前へ確認に向かえ!』
まずい・・・・・・!
間もなくここへ武装した増援部隊がやってくる。
早くここを抜けなければならない。
俺は壁を隅々まで見渡した。
すると、遥か向こうに小さな鉄の扉を見つけた。
あそこから中へ入れそうだが、鍵が掛かっている可能性もある。しかももしあの扉から増援が来るとすれば、思いつく方法は一つ。
俺は扉の近くの茂みに伏せ、増援を待った。
しばらくしてから、扉の鍵が開けられる音とともに三人の兵士が現れた。
三人とも、ボディアーマーにヘルメットとかなりの重武装だ。
増援が扉から離れれていった瞬間、俺は開かれた扉に向け、一気に移動した。
そして、扉の向こう側へと入ると、目の前には、今回の目標である核発射施設が聳え立っていた。
大地は雑草ではなくアスファルトで塗り固められ、施設だけではなく、倉庫や、トラックが駐車しているのが見える。警備兵の数も多い。
かなり巨大だな・・・・・・。
これでは何所でセキュリティーの制御を行っているか、想像もつかない。
確かに、レーダーが壊れていなければ目標まで一直線だったかもしれない。
とにかく、施設内部に潜入してから大佐に指示を請うとしよう。
俺は駐車してあるトラックに身を隠すと、ボルトガンのチャージレバーを引いた。
「見えた見えた。思ったとおり。タイトさんだっけね~。僕達も始めようか。アレの発進準備は?」
「既に出来ている。」
「よし。じゃあ操縦は君に任せるよ。」
「まぁいいだろう。ところで、君は本当にやるつもりなのか?」
「当然。だって、面白そうじゃない。新入りの性能も試したいし。」
「後々どうなるか分かったものじゃないぞ。」
「いーよ別に。許可は出てるんだから。」
「ふん・・・・・・君は実に馬鹿だな・・・・・・。」
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