「主!」
私が学校から出ると、嬉々として私を迎えにきた人影があって。
その人影は私の手を引くと、猛ダッシュで家に向かった。
とは言っても学校から家までは大してかからないのだけれど。
「がっくん。迎えに来てくれるのは嬉しいけど、もうちょっと目立たないようにしてくれる?」
私は目の前に座っているがくぽに言う。
「しかし…。」
「ほら、そんな顔しない。分かってくれればいいんだよ?」
「……。」
がくぽは黙って頷いた。
なんとなく主人に怒られた子犬のようなオーラを感じて、つい微笑ましくなる。
今日の夕飯、なす田楽にしてあげようっと。
そんなことを考えつつも、グリルで焼いただけの鰺となす田楽、それにご飯を器に盛り付けて食卓に運ぶ。
「がっくん、ご飯だよ?」
「あぁ、手伝わなくてすまなかったな。」
「そんな、いいよ別に。」
すぐ謙遜するがくぽをせっつきながら食卓につく。
…我ながらおいしい!
「主。」
「なあに?」
「いや、毎日迎えに行くのは迷惑か?」
あぁ、さっきのことまだ気にしてるのね。がくぽらしい。
問題なのは迎えに来てることじゃなくて、外見の派手さなんだけれど。
下手にストレートに伝えたら切腹するとか言い出しかねない。
さてどう納得させるか。
「んー、別に迷惑じゃないよ。ただ、」
「ただ?」
「せめて髪が目立たないようにとか、できる?」
「髪か…考えてみよう。」
そういうとなんだか真剣に考え込んでしまった。
生真面目だなー。
その後、ずっと上の空ながくぽに入浴してもらって眠りに就くまで結構いろいろ大変だったけれども。
―――――
その次の日。
また今日も遅くなってしまった。
校門を出ると、いつもいるがくぽがいない。
「なんか寂しいな…」
そう呟いて家へと向かう。
来るのが当たり前になっていたことを実感した。
でも、考え事をしていた私は気づけなかった。
まさに今、すれ違おうとしている人がナイフを持っていることに。
「…っ!?」
私の腕に突然激痛が走る。
どうやらナイフで刺されたようだ、ということを認識する前に殺人鬼(としか考えられない人)がさらに刺そうとしてくる。
(あたしはこのまま殺されちゃうの?やだよ、助けて、がくぽ……。)
そう思った瞬間。
殺人鬼の持っていたナイフが音を立てて地面に落ちた。
そのまま腕を押さえてしゃがみ込む殺人鬼。
次の瞬間、暖かい腕に抱き取られるのを感じた。
「がっくん!?」
「主!!大丈夫か!?」
「あたしは大丈夫。とにかくこの殺人鬼をどうにかしないと…」
殺人鬼が立ち上がって、ナイフを拾い、再びあたしに襲いかかってきた。
がくぽはあたしを側におろすと、ナイフを軽々と避け、殺人鬼に袈裟懸けに斬り伏せた。
殺人鬼は一瞬怯んだものの、再び襲いかかってくる。
がくぽはナイフを刀で受け止める。
その隙に、あたしが殺人鬼の腹に渾身の拳を叩き込んでやった。
「がはっ……」
ふっとんだ殺人鬼は、気絶していた。
「ふぅ…。ありがと、がっくん。」
「主、強いな…って!!」
「何?」
「腕、ケガしてるではないか!!」
「大丈夫だいじ……」
いってる側からよろけてしまう。
かなり出血も酷いし、大丈夫っていうのかな、これ。
「大丈夫ではない!!とりあえず家へ!」
がくぽは私を抱きかかえると、家へと走った。
―――――――――
「これで大丈夫だ。あとは安静にな。」
私の腕に包帯を巻いたがくぽが言う。
「い~つも、すまないね~。」
「それは、言わない約束でしょ。」
私のボケに見事にのってくれた。
やっばりがくぽにはツッコミの才能があると思う。
「主……」
「どうしたの?」
「拙者は、主のことが…」
私はがくぽを抱き寄せる。
「主…?」
「言わなくても大丈夫。だって、私も、がっくんのこと、好きだから…。」
「主…。」
「これからも、ずっと一緒だよ…?」
私はがくぽの唇に、自分の唇を重ねる。
驚いた顔をするがくぽ。でも、すぐに目を閉じ、私を抱きしめた。
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