「全く!君は何回教卓を破壊すれば気が済むのかね!!」
バンッ!と理事長の机を叩いて副理事長が幸乃に怒鳴った。幸乃はゲッソリとしている。
「あぁ~、ん~。未定ですかね。それか気分次第。または、マナのコントロールができるまでですかね~、多分」
と頭を掻きながら幸乃が不真面目に答えると副理事長は癇に障ったのか幸乃をキッと睨んだ。ヒィッと幸乃は全力で身構えている。
「真面目にやらんか!!貴様のマナなど、私に比べてほんのちっぽけな代物だろう!!」
副理事長は幸乃の胸倉をつかもうとするが、それを鮮やかに避けてみせるのが幸乃なのである。そして、幸乃は副理事長の胸倉をつかもうとしたその右手をつかむ。
「じゃあ、俺のマナをあんたにぶち込んでみますかィ?」
不気味な笑顔を浮かべた幸乃がそんな事を言っている。彼の目つきの悪さを作り上げている瞳孔の狭い蒼い瞳は赤い光を反射し、さらに彼の周りから自身のマナによるマナ磁場を生み出し、恐怖に近いオーラを放っている。幸乃の周りで青いマナが渦巻いている。
さすがの副理事長も、これにはビビっているようだ。
「やめときなさい、幸乃君。君のマナを副理事長に送り込んだら、副理事長の体が保たないですよ」
若き理事長の蘇我入間(女、非常に性別がわかり辛いが)は副理事長に叩かれた机を拭きながら言う。
「理事長!!」
副理事長は幸乃の手を振り払って入間に抗議する。
しかし、入間は悠々とパイプをくわえている。
「あら…?副理事長には判らないのですか?幸乃君のマナ量は私よりも遥かに多いのですよ?」
う、うぅ…と副理事長はたじろいだ。ざまぁみやがれ、という顔を幸乃はしている。
「潜在的能力は人それぞれなのです。彼はそれが異常に大きすぎたに過ぎないこと。しっかり磨いてゆけば、素晴らしい賢者になれるでしょう」
賢者ァッ!?幸乃は大いに驚いている。
当たり前だろう。賢者とは、入間を含めた大魔術を使用できるほどの魔導士のことで、魔法学校生にとって、あこがれの存在なのである。
「蘇我先生!それって、本当ですか!?」
幸乃は大いに興奮している。
そんな彼を見て、入間はフッと小さく笑う。
「君の努力次第です。頑張りなさい」
幸乃は「はいッ!!」と返事をした。
よろしい、と言って入間は彼に下がって良しと指示した。
彼女は彼がクラスでどんな扱いを受けているかぐらい知っているようだ。できるだけ励まそうとしているのがわかる。
バタン………

「……良いのですか?あんなこと言って」
と、幸乃がいなくなった理事室で副理事長がぽつりと言う。
「何がですか?」と入間は副理事長に問う。
「あ、いえ。その…」と、言葉を濁している。
「私は真実を言ったまでですよ。それに彼には“あれ”がありますから」
「そ、そうですか…」
「それに、今回、彼はきっちりと魔法が成功してましたよ」
「!」副理事長は驚く。いったいどういう事なのだろうか?
「理事長、それはどういう事ですか?」
副理事長はそう尋ねるが、入間はお茶目に笑い
「ふふふ、内緒です」
と悪戯っぽく笑う。
「は、はぁ」
「それに、私の机をたたかないでください。この机は私の特注のマホガニー製で敏感なんですから!!」
と入間は怒った。
副理事長はそんな入間に多少困惑しているようだ。

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Sforzando!練習番号“1”002

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投稿日:2010/04/10 22:50:48

文字数:1,367文字

カテゴリ:小説

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