幸水さんの無茶な案は直ぐに大学部の協力の下進められる事になった。私達は当日コスプレに近いドレスアップで居れば良いと言われたけど、着せ替え人形に疲れてテラスに避難していた。

「あれ、天城会長何やってんの?」
「鶴村か。」
「人の顔見てあからさまに溜息吐くとか失礼だと思うわよ、そんなに日向ちゃんが良かった?」
「そうじゃない、不快にさせたなら謝る。」

素っ気無く言うと会長はまた外に向き直ってしまった。真面目一直線の会長がサボり?でも何か見てるっぽい?

気になって視線の先をそれとなく追ってみると、中庭のベンチで眠りこけている緋織ちゃんが居た。

「えぇっ?!緋織ちゃんまたあんな所で寝て…!」
「大丈夫だ、見ろ。」

もう一度視線を戻すと、タイミング良く戻って来たらしい真壁さんが緋織ちゃんを揺り起こしていた。

「ラブラブですねー。」
「そんな暢気な物じゃない。倉式の今の生活環境は言っちゃ悪いが異常だ。両親も戻らない以上誰かが側に居てやらないとどんどん弱って直ぐに参ってしまうだろう。」
「そんな大袈裟な。」
「事実だ。館林先生や輝詞先輩も同じ見立てをしているし、何より本人がよく解ってる筈だ。」

言葉が出なかった。さっきまで微笑ましかった光景が酷く危うく見えて胸が痛くなった。

「あ、あの…会長、私不謹慎な事言ってごめん…。」
「実に役得だと思わないか?」
「……はい?」
「あんな才色兼備がインプリンティングされた雛鳥の如く自分に寄って来る訳だろう?ベタ惚れだったのと国家権力の手前押さなかったが実に大物を逃した気分だ。なぁ?」

なぁ、じゃないわよ、突き落としてやろうかしら?心配してるのかと思ったら誰よりも不謹慎じゃないの!

「冗談はさて置き。」
「絶対本気でしょ?ねぇ?」
「お前に頼みたい事がある。」
「私に?」

覚えも無いのでポカンとしていると、ポンとデジカメを渡された。私のでも密佳のでもなかった。

「押収された画像のコピーだそうだ、再生してみろ。」

言われるがまま画像を再生して行くと、私は悲鳴を上げそうになった。何時撮られたのかも解らない私や参加者の写真がギッシリ入っていた。家に居る時のものはかろうじて無かったけど、数人は体育後の着替え写真まであった。

「一応言うけど俺が撮った物じゃ無い。」
「そう…で、頼みたい事って?」
「この写真が撮れる場所を割り出せるか?小型カメラみたいな物が残ってるかも知れない。」

学校ってこんなに無法地帯だったかしら…。私は頷きながらうすら寒い物を感じていた。

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いちごいちえとひめしあい-130.無法地帯-

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投稿日:2012/06/26 18:50:37

文字数:1,070文字

カテゴリ:小説

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