カチカチカチカチカチカチ。
真っ暗な部屋に神経質な音が響く。たまに、どこかから爆発音が微かに聞こえる。ただひとつの光源は目の前のゲーム画面。
カチカチカチカチカチカチ。
ただひたすらに、機械的にボタンを押す。カチ。機械音と共に記憶が溢れ出してきた。

僕は、いわゆる秀才だった。体力は十人並みだったが、今まで誰も解いたことのない数学界の有名な問題を小学生にして解いていたような奴だった。もちろん、新聞やテレビにも出ていて、それなりに有名だった。性格は多少ひねくれていると自分では思うのだが、周りの人たちはこぞって頭はいいが嫌みなところがなくてよい、と言っていた。
それは、しんしんと雪の降る日のことだった。僕は書斎の机に座って、いつものように誰も解いたことのない数学の問題を解いていた。別に大したことはしていない。論理と摂理というルールの中でできることなんてたかがしれていて、それを適切に使えば僕が解けない問題なんてなかった。ひとつ、解き終わるとまた新しい問題に取りかかる。頭を使うまでもない。辺りにある問題を詰めた本棚に手をかけようとして、気がついた。もう、解くべき問題がないことに。少し空虚な気持ちになったけれど、別に困ることは無かった。
学校に行って、遊んだ。楽しかった。だけれど、虚ろな心は埋まりはしなかった。
なぜだろう、と思った。きっと、解くべき問題がなくなったからだろう。それはわかっている。ならば、問題を作ればいい。とびきり難しい問題を。世界を揺るがすほどの、問題を。
そうと決まれば、後は早かった。この世界で、一番難しい問題。それは、生き物を全て排除することだ、という結論に至った。人間は思考をするから厄介だし、動物は力があったり、素早かったりする。これは厄介な問題だぞ、と、僕の胸は高鳴った。
排除するのにも、個性がないといけない。僕は、それをゲームという形にすることにした。自らのゲームについての技能、人々、動物の行動、全てを計算した。予測した行動をもとに、生物を排除する計画を練った。互いに互いを殺しあうように、誰一人として生き残らないように。そうして、世界の各地のミサイルのスイッチを、ゲームの中に取り込んだ。この世界は、拠点を崩壊させただけで混乱する。できるだけ効率よく、無駄のないように。全てを計算していった。
遂にそのゲームができたときには、2年の歳月が経過していた。誰も僕のことなんか、覚えていないんだろうな、と思いながら、ゲームのスイッチを入れた。僕だけのゲームのスイッチを。

そうして、今に至るってわけだ。またボタンを押しながら3042回目の回想を終える。
カチカチカチカチカチカチ
そろそろ、ラスボスだよな、確か。もう正確には覚えてないけど。自分で作ったゲームのストーリー忘れる僕って、と自嘲した。
チャラリーン チャラッチャラー
あ、きたきた。黒いものが画面に映る。さぁ、ここからは僕と僕の一騎討ちだ。
カチカチカチカチカチカチ、カチ
チャラリーン
あぁ、また終わっちゃった。もう、何もない。全部、終わっちゃったんだな、と思った。
ふわり、と書斎にガスが流れ込む。足元から侵食するように僕の身体を包んでゆく。
まぁ、いいか。このゲーム、僕を殺してこそのゲームクリアだもんな。
意識が遠退く。ばいばい、全て解かれた世界。このさき、どうなるのかはわからないけど、また早く問題ができんことを。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

ゲーム

こんにちは。お久しぶりです。だいぶ前のが発掘された模様です。

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閲覧数:127

投稿日:2011/03/14 22:35:36

文字数:1,418文字

カテゴリ:小説

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